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2019-09

宿禰慧一編 「ペンテコステ」 8 - 2010.08.24 Tue

慧たん1



8、
 翌日、和倉まで家族旅行を気取っては見たものの、凛一も俺もふたりきりになりたくて仕方がないものだから、どうやって疑われる事無く両親から逃れられるか、練っていたところ、ちょうど社宅の隣りの飯田さんから那須高原のペンションの予約があるが、自分達が行けないからお譲りするという申し出があり、喜んで承諾した。
 そそくさと親元から一旦離れ、鎌倉のマンションへ一時帰宅した。

「親父達と一緒じゃなきゃわざわざ那須まで行かなくても、別に鎌倉でも良くないか?」
 と、連日の疲れからか凛一の腰は重くなる。
「ここに居たんじゃ気が変わった両親がいつここへ帰ってくるかが気がかりで、セックスに没頭できやしない」
 俺は凛の尻を叩いて、一刻も早くマンションから出ようと促す。
「焦ってる慧の姿を拝めるのは滅多にないのに、その理由が俺とのセックスじゃあ、確かに母さんも梓も浮かばれないね」
 などと、皮肉を言う凛の腕を掴み、タクシーに飛び乗った。

「恋人のいるおまえと違って俺は綺麗なもんでね。独り者のひもじい思いをしているんだよ。少しぐらい同情されてもいいだろう」
「…なんだか、化けの皮が剥がれた狼って感じ。スリルだね。そういう慧も好みっちゃあ好みだけど…こっちの身体が持つか心配になるよ。お手柔らかに…」
 運転手に聞こえないように俺の耳元で囁く凛の声は甘い。
 上目遣いの媚態も計算してのことなのかは知らないが、こちらが負けるのはわけない。

 凛の誘いに乗って新幹線の洗面所で、誰も居ないのを確かめてキスを楽しんだ。
 正直スリルが過ぎて俺の性分には合わないと閉口するが、凛は構わない。
「何を恐れているの?親戚の連中も友人もいないし、誰も俺たちのことなんか知ったことじゃないのに。慧は人目を気にしすぎだ」
 罪の炎など畏れる気色は初めから持たない凛一の黒曜石の瞳が強く影を放つ。
 紅く濡れる口唇を味わうと、さっき飲んだ甘いソーダの味がした。

 那須塩原駅から車を借りて、目的のペンションまでドライブを始める。
 すると、凛はさっきまでの欲情の色はさっぱり消えて、目の前の自然のパノラマに感動の声を上げる。
 今に始まったことじゃないが、こいつはなんでこうもコロコロと移り気が激しいのだと呆れる。
「さっきまでとエライ違いだな」
「え?何が?」
「新幹線の中では今にもやりたそうに迫っていたクセに、もうすっかり忘却の彼方か?」
「別に忘れているわけじゃないさ。目の前に立ちはだかる自然の前じゃ、俺の性欲なんざちっぽけなもんで、まさにしっかりエコされた気分」
「おい、エコの使い道が違うだろう。…確かに心洗われる光景だがね」
 右手に見える那須連山を眺めつつ、車の往来も建物も少ない土地に来るとほっとする自分がいるのは確かだった。
「自然に感動するという意識は住んでいる人にとっては当たり前の風景だから、おまえみたいに情感は少ないだろう。それこそ常に浄化されているのだろうか。私欲が自然に淘汰されるなら、少しは罪も軽くなるだろうか」
「…なに?慧は俺と寝たことを後悔しているのか?」
「そうじゃないよ」
「じゃあ、罪だとかネガティブなことを言うなよ。俺は慧と繋がったことが倫理的に、思想的に禁忌だと言われようと、ちっとも罪だとは思わないね。生物学的に見ても何がファクターかどうかは後付に過ぎないし、そんなもんは個々で違うもんだろ。俺は慧と愛し合うのは生きてきた過程での当然の成り行きだと思うし、幸運だと思う。罪なんか感じない。もし慧が俺と寝ることで罪の意識を持つというのなら、俺が全部担ってやるよ。俺は重さなんて感じない性質(たち)だから、貰った罪は燃やして灰にしてやるから」
「ソロモンの大公爵みたいなことをい言う奴だな。大丈夫だよ。俺ももう乗り越えたよ。随分悩んだのは事実だし、おまえを抱いてしまうことを畏れていたよ。だけど、凛とこうなったからって俺の中で畏れていた後悔や自責なんてもんは、一度も沸いてこないんだ。あれだけ拘っていたのにと自分でも不思議なんだがね。
俺が言う罪というのは…凛が俺を、俺が凛を選んだことで、過去や未来の巡り来る回りの色んなものを犠牲にしてしまわないかと…それが心配になんだよ」
「それって…ミナのことも含まれる?」
「…それもある」
「ミナのことは嶌谷さんに相談したよ。嶌谷さんは恋する気持ちに罪はないと言ってくれた。その想いが純粋であれば尚の事、別れても大切な思い出になるだろうとも言うんだ。俺への優しさなんだろうけれど、ミナを傷つけることに変わりはない。
…ミナを誘ったのは俺だ。その俺から別れを言い渡すんだからね。それこそ、計略を謀って向こうから言わせる手立ても考えないこともない。だけど、ミナの純粋な想いには小賢しい謀り事はやめたよ。
卑怯すぎると物事は歪んでしまう。俺がミナを愛している事実は変えられないんだし。
 ミナとの恋愛を綺麗に終わらせる為にはどうしたらいいのか…どう考えても無理なんだ。ミナと別れる場面が俺には思いつかない。この恋は本物なんだ。だから俺とミナの中では、もう綺麗な思い出になるはずもない。
…慧に聞かせる話じゃないけどね…ああ、慧、ここだよ。目的地だ」
「…」
 複雑な気持ちで駐車場に車を止めた。

 本館のフロントでチェックインをしながらも、凛の言葉が頭を支配した。
「この恋は本物なんだ」か…
 相変わらず歯に衣着せぬ物言いだが、多分その想いは本音なのだろう…俺だからこそ敢えて言葉にしたのかもしれない。
 本館から100メートルほどの上り坂を歩いたところに別館が立ち並んでいた。
 南仏風の洋館仕立てのメゾネットは、天井も高く、天窓の明りが部屋に満ち溢れていた。
 案内人から簡単な説明を聞き、鍵を受け取り見送って鍵を閉めた。
 リビングに戻ってみても、凛一の姿が見えない。
「凛!どこにいるんだ?」
「上だよ。ベッドが3つもある。慧、冷蔵庫から水持ってきて。喉が渇いちゃった」
 ミネラルウォーターを手に、二階に上がれば、ベッドの毛布に下半身だけ入り込んだ凛が横になっていた。
 もうひとつのベッドに脱いだ服が綺麗に重なっている。

「なんだよ、もう裸になりやがって。性欲は自然に淘汰されたんじゃなかったのか?」
 呆れながら、ペットボトルを渡す。
「ベッドを見たらここへ来た目的を思い出した。自然はまた欲を満たすものでもある。そこに山があるから人は登るんだろ?早く俺は満たされたいからね。ね、やろうよ、慧」
「夕食の時間まで二時間しかないよ。大丈夫なのか?」
「二時間もありゃ充分楽しめるじゃん」
「した後の名残りが凛の顔に映るから、心配だな」
「じゃあ、慧にも付けてやるよ、キスマーク」
 言うが早いか、凛は俺の首に腕を回し、襟際の最も見える場所に、真っ赤な痕を残した。
 その仕返しにとその後、何倍もの烙印を凛の身体に与えてやった。

 2時間後の食事予定を大幅に変更せざる負えなくなったのは、俺だけの所為じゃない。




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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


こいつらロクでもねえことしかやっておらんの(;´∀`)







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