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2019-09

君の見た夢 14 - 2008.11.19 Wed

由貴人が居なかった三日間は、異次元でのひと月近くにわたる到底信じられないRPGになっていた。

三人とも一概には信じ難く、それでも由貴人が大法螺を吹く性格ではない事は否が応にもわかっていたので、ユキの話が終る頃には、このなんとも信じ難い異次元の物語が真実だと信じざるを得ない状況になっていた。

呆気に取られた俺達は全てを話し終えてホッとしている由貴人を見て、初めて正気に返った。
「…なんか、凄すぎて…」
「千夜一夜物語みてぇ…」
「いやいや、それを言うなら日本むかし話…」
「なんだっていいよ、ホントの話なんだから」バカにされたと思ったのか、由貴人が口唇を尖らせてむくれる。それを見て、元の由貴人に戻ったのだと他のふたりはほっとしたかのように笑った。
俺は笑わなかった。
「あー、でも俺も会って見たかったな、シェフの俺様に。なあ、眞人」
「そうだな。小説家っていうのも手だな。バンドやめたら考えるか」
「ムリムリ、漢字も読めねぇのに小説家なんて笑えねぇよ。マコちゃんはドラマーにしかむいてねぇの」
「うるせぇ」
二人の会話を嬉しそうに見つめる由貴人がここにいる。それでいいんじゃないのか?
許せるだろう?
…俺は俺自身を誤魔化そうと喘いでいる。

真実の焦点がどこかは、全員がわかっていたが、そこに敢えて触れない二人に感謝した。突き詰められたら俺もユキも正気じゃいられない気がしていた。
俺の中では…もう見えていた。帰ってきた時の由貴人の態度や、俺と目を合わさない事も、あの跡の事も…ユキが話している途中で…もちろんそれには一切触れてはいないけれど…そいつの存在が出てきた時点で、嫌になるくらいはっきりと…それはすでに俺の目の前に突きつけられていて、俺はその事しか考えられなくなっていた。

…ユキは…俺とそっくりな奴と寝ていたんだ…

あの跡を見た時から、わかってはいた筈なんだが、衝撃は免れなかった。
裏切られたという敗北感。止どまる事のない嫉妬心。何よりもユキに対する憎しみにも似た怒りを押さえる事ができない…
俺は飲めない酒を煽って、それでも酔えない俺に呆れ果てていた。

帰り際、岬と眞人を見送った後、俺は立ち尽くすユキの手を取った。いつもは熱い筈のユキの指先が冷たく感じた。
「ユキ、話があるんだけど…」
何も言わず目を逸らす。
「俺んちに来てくれる?」
できるだけ穏やかに、由貴人を怯えさせないように、慎重に進めなきゃいけない。俺は何度も自分に言い聞かせた。
コクリと頷いた由貴人は手を掴む俺を振り払ったりはしない。
タクシーの中でも手を繋いだまま…窓の外を見るおまえは何を考えているの?

家に着いてリビングのソファに座らせる。氷を入れたミネラルウォーターを差し出すと、一気に飲み干してグラスを返した。

俺が何の答えを待ってるのか…おまえにはわかってんだろう?

「あのね…夢…」
「夢?」
「うん。俺ね、夢を…見てたんだ。ずっとね…麗乃の夢ばっか見てた…」
「俺の?」
「うん。あっちじゃ俺の居場所なんか無くてねぇ…俺なんかいらねぇって綺麗さっぱり否定されっぱなしだもん…すげぇ辛かったの…」
「…」
「おまえを呼んでも来てくんねぇし……だから…だからね…あいつと寝たんだよ…」
「もういい」
「だってねぇ、おまえそっくりだもん。ホントだよ?顔もね、身体もね、声も…優しいとこだってさ…もうね…全部一緒なんだもん…」
「もういいから…」
「しょうがなくねぇ?…ねぇ、欲しいって思っても仕方ない事じゃないの?…麗乃は…」
「ユキ…」
崩れる由貴人の身体を抱き留める。こんなにも軽いのか…項垂れたまま息を吐く声が嗚咽に変わる。
「麗乃は…俺を許さないよねぇ…許すわけねぇもん…」
許す?俺が許すと思うのか!…俺の気持ちを踏みにじったおまえを…
「許すから、…もう許すから…何も言わなくていい…」
「ご…めん…レイ…ごめん…ね…」

俯いた顔を引き上げて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を両の手の平で挟んで…その頬にも額にも目蓋にも口唇にも何度も何度も口唇を落とす。
それは許しの行為でもなんでもなく、俺の束縛の印だから…
許さない…許せない…あたりまえだろ、そんなの…
だけど…
おまえを誰にも…向こう側の俺にも渡しはしねぇから。
おまえが俺しか見えなくなるまで、おまえのすべてに俺の印を付けるよ。

ねぇ、由貴人。一番汚いのはきっと俺なんだよ。

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