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2019-09

宿禰凛一編 最終章「only one」5 - 2010.12.13 Mon

リンミナ手を繋ぐ11

5、
 クリスタルエレベーターからの夜景を目に映してはいるが、頭の中には入ってこない。
 思いがけないミナからの誘いをそのまま受けてはみたが…
 このまま雪崩込んでもいいものなのか…
 相手がミナじゃなかったら、こんなに悩みはしない。
 適当にその気になって、成り行きを楽しむだけだ。

 ミナが好きなら…大事にしたいって思うなら、他の奴らと同じように扱うわけにはいかない。だけど、俺を求めるミナに応えてやりたいって気持ちも少なくない。第一、ミナが俺としたいって願っているんだから、その望みを叶えさせてあげたい。
 …俺に出来る事なら、なんだって…

 泊まっていた部屋に案内し、先程飲んでいたワインを勧めると、ミナは自分でグラスに注いで飲み始めた。
 本当に酒豪になったものだと感心するが、アル中にはなるなよ、と、心配したり。
 ミナの左指には、あの時誓った指輪が嵌めてある。
 ミナの意思を知った俺は、ミナに手を差し出す。
 その手を一寸の躊躇いもなく握り締めるミナがたまらなく愛おしくて仕方がない。
 
 ミナの涙を拭いて重なり合った。
 部屋の灯りをサイドテーブルだけにして、お互いを見つめ合った。
 裸になったミナはなんだか少しはしゃいでいて、明るい声で喋りだす。
「リンがヨハネのチャペルを建てるって知ってね、鳴海先生がおれに中に飾る絵を描いてくれないかと言われたの。一度は断ろうと思ったけどね…」
「どうして?」
「だって…建築家として成功しているリンに比べられるのが嫌だったから…」
「じゃあ、どうして引き受ける気になったの?」
 眼鏡を外し、背中を撫でるとあわてて俺の胸へ顔を埋めた。
「…リンに負けたくないって…思ったから」
「…なるほどね。ミナらしいや」
 クスリと笑う俺に、少し腹を立て、ミナは顔を上げて俺を睨んだ。
「リンはずるいんだよ。カメラの前でああいう事言ったり、したりしてさ。ああいうの見せられたら、おれだって意地があるからな」
「ミナがね、そういう気になってくれるのを期待してたわけじゃないんだ。ただ、俺の気持ちを知って欲しかっただけ。逆に言えばおまえの気持ちなんて、何も考えていない独りよがりのパフォーマンスなんだ。思い上がりって言えなくもないし…褒められたものでもない」
「嬉しかったんだよ。あのフィルムを見たから、今回の展覧会のイメージが掴めたんだ」
「そうなのか?」
「悔しいけどね…やっぱりおれの中に、…リンっていう存在が…おおきい…リン、そこ…」
「感じる?ミナの性感帯は昔と同じだね」
「…リンは、昔とおんなじで…意地が悪いや」
「嫌い?」
「…好きに決まってる」
 熱くなったミナの中と俺を結びつける。
 セックスなんて誰とやるのも一緒なんて…冗談でも思わない。
 全く以って人間なんて、感情の塊でしかないものだから、愛と言うわけのわからぬ化物のような最大級の台風が暴れることに怯える必要もない。
 俺とミナが愛し合っている以上、何ひとつとして恐れるものはない。
 ミナが俺の名前を呼び、俺がミナと呼ぶ。
 瞬く夜景が飴色に溶けていく暁闇の頃、ふたつになった身体を確かめ合い、俺たちはお互いに見惚れた。

「…二度とないと思っていた」
「俺もだ」
「でも、どこかで信じていた」
「俺もだ…」
「ありがとう、リン。最高のクリスマスだ」
「めでたし、恵まるる者よ、汝は祝福せられ…我とともに生まざれり…」
「聖なる哉、その栄光は全地に満つ…」

 朝日を見る事無く、眠りについた。
 寝る間も惜しいというのに…


 
 翌日、鎌倉の聖ヨハネ学院高校へ、ふたりで行くことになった。
 二人で過ごした温室が壊されることを知ったミナが最後の別れと言いたいと言う。
 JRで鎌倉まで行く。
 教会建設の為に何度も足を運んでいるから、懐かしい気はしないつもりだったが、横にミナがいるだけで、なんだか高校生に戻った感覚でおかしかった。ミナも同じように感じたらしく、しきりと「変な気分だ」と、頭を傾げている。
 職員室へ赴き、先生方に挨拶をする。 
 藤宮は俺とミナが一緒でいることに、変な目つきで睨んだが、そこはスルーした。
 ミナが他の先生への挨拶に行ったのを見送り、俺は藤宮の国語準備室で待たせてもらった。
「今日、あの温室が壊されるぞ」
「え?今日?」
「ああ、補習も昨日で終わったしな、生徒が居ない時に、工事を進めるらしい」
「体育館の方は大分出来上がっているからね」
「ああ、立派なランドスケープデザイナーのおかげで、やたら洒落た作りになっているから、来年の受験生が増加しててな」
「結構なことだ」
「面倒臭えんだよ。おまえらみたいな生徒が増えると思うとな」
「いいじゃん。選び甲斐があって…」
「生徒に手をつけるかよ」
「生徒は三年たったら、卒業するんだよ。いつまでもここの生徒でいる奴なんかいない」
「そうだな…ここは…青春の墓場でもある。あちこちに若造共の愛憎劇の屍だらけだ」
「それを弔うのも先生の務めなんだろ?」
「俺は…眺めるだけだよ。美しい屍の輝きを…見つめるだけだ」
「紫乃みたいなロマンチストはきっと、誰よりも輝かしい愛を手にする。絶対だ…俺がそう願うんだから」
「馬鹿野郎、人の心配なんてするんじゃない。おまえには誰よりも幸せにしなきゃならない奴がいるだろう?それを忘れるな」
「…わかっているよ、先生」
 紫乃は正しい事しか、言わなくなった。

 
 古びた温室へ、ミナとふたり久しぶりに足を運ぶ。
 室内は埃っぽくあちこちの隅にはくもの巣が張り、めぼしい草木や鉢はなかった。
「今日、壊されるんだって」
「そうだってねえ。藤内先生から聞いたよ…ほとんどの植物は正規の温室へ移されたから何にもないね。元々この温室自体が廃屋だったしね」
「うん…」
 部屋の奥に机と椅子があった。
「あの頃のかなあ」と、言いながらミナが机の中を覗いている。「あ、これおれのペンケースだ」
「へえ~、残っていたのか」
 ミナはペンケースを開け、そして慌てて閉める。
「どした?」
「な、なんでもない」
「なんだよ」
 不自然な言動に俺はミナに近づき、後ろに隠したペンケースを見せるように迫る。
 渋々とペンケースを開けるミナに構わず、中を見る。
 デッサン用の鉛筆とねり消しゴム。それと…コンドーム。
「え?これ、俺たちが使ってた奴?」
 手にとって確かめてみる。
「たぶん、そうじゃない?ここでそういうの使うのって…そんなに居ないだろ」
「懐かし~、まだ使えるかな」
「ば、ばか、そんなの使ってどうする!」
「ミナとするんだったら使わなくてもいいしな」
「そ、んなことを、口に出して言うなっ!」
 ムキになって怒るミナの顔が…あの頃とあまりに同じだから…急に胸が熱くなった。
 ミナは大事そうにそれをペンケースへ戻し、自分のバックに入れた。
「おれね、リンとの思い出の品っていうか…色んなプレゼントやら貰ったもの、あの時の受験票、ここでリンと手首を繋げたリボンタイ…なんかをね、空き缶にしまっているんだ。おれの宝物だから…」
「…」
「これもリンとの思い出の宝物になるから…」
「ミナ、俺は…」
 おまえを思い出にしなけりゃならないのか…

「今から壊しますから、外へ出てもらえますか?」
 解体業者が顔を覗かせ、俺たちに声を掛けた。急いで温室から離れた。
 解体作業はすぐに始まった。
 温室が壊されていく様子をふたりで眺めた。
 俺たちが過ごした三年間は、ものの十分とかからずに、跡形もなく潰されてしまった。
 お互いの手をそっと握り締め、俺たちは温室の最後を見送った。




温室3-3



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