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2019-11

君の見た夢 15 - 2008.11.20 Thu

8. 君を想う心


俺の毎日は、朝からスタジオに通い、ギターに触れ、音を奏でる事だけになっていた。
そうしていれば、余計な事を考えなくて済む。

すべてを忘れたいと願っても、どんな過去でも消すことはできないだろう。俺は実際向こう側に行って、辛かったし一杯泣いたけど、何故だろう。嫌な思い出になんかなっていないんだから。

「夢を見てただけだよ。忘れてしまえばいい」と、麗乃は言うけど、夢じゃねぇもの。現実に麗乃はいたんだもの。それを否定するのは、俺が否定されているのと同じじゃねぇか。そんなのねぇ、違うと思うから、俺は。

俺はねぇ、レイ…向こう側の麗乃もちゃんとね…好きなんだよ…だから…


あの桜の木の下に立ってみる。
今は…向こうから消えた時と同じ様に、緑の葉っぱが生い茂ってるよ。もう春は遠いなぁ…
携帯を取り出して、あいつの番号を押す。掛かるはずもない…でも、もしかしたら…
コールの音が鳴る度、心臓が高鳴って仕方が無い。
『もしもし』懐かしい…聞き慣れた声だ。
「麗乃?」
『…!ユキっ!ユキなのかっ?』
「そうだよ、麗乃」
『ユキ、おまえ…どこにいるんだよっ』
「元の…世界だよ。戻れたんだよ、俺」
『そうか…でも何で…いくら電話しても掛からなかったのに…どうして…』
「今、どこに居るの?」
『桜の…』
「うん、俺も…きっとここが中継地点なのかもな、俺とおまえを結ぶ…」
『そんな事…どうでもいいよ。ユキ、おまえ元気なのか?』
「元気だよ」
『…そっちの俺と?』
「…そうだよ」
『…おめでとう…って、言うべきなんだろうな』
「…そうだね、元に戻ったんだから」
『もう…もう会えないのか?ユキ』
「だってそこは…俺の居るべき場所じゃないもの」
『ユキ…』
「麗乃、俺はね、俺はおまえを忘れたりしねぇからさ」
『俺だって…一生おまえだけしか愛さねぇからっ!』
「…」
なんて恥ずかしい事言ってんだよ…涙出るじゃん。
「ごめん、香月。もう…電話掛けたりしねぇから。ゴメンな…」
『ユキ、待てってっ!ユキ、愛してるから…ずっと…』俺は電話を切った。
麗乃の言葉を、俺は最後まで聞く事は出来なかった。
それをすべて受け入れる事は出来ないから。


その足で麗乃の家に向かう。
麗乃が許していないのはわかっていた。その上で俺を欲しがっているのも知ってる。
だから、
許してもらえなくても、俺はその罪も痛みも全部背負って、おまえに向かいあいたいんだ。
おまえが好きだから。

マンションを訪ねると、日も暮れているというのに部屋の灯りも付けていない。
薄暗い中で、麗乃の姿を追う。詩曲作りの最中なのか、家の中は書きなぐった用紙が散らばっていた。
その中心にぽつんと、麗乃が座っていた。
名前を呼ぶとゆっくりとこちらを向く。
「ゴメン。仕事中だったね」
「…いいよ、あんまり進んでねぇから」
「そう…」それは俺の所為?だったらそれも償わなくちゃいけないね。

「麗乃、俺ね、ちゃんと言わなきゃって思って」
「何?」
「俺の気持ち、全部話したい」
「悪い話なら聞きたくねぇよ」
「…麗乃はさ、俺を本当に必要としているの?」
「今更何?…そんなの、決まってんじゃん。必要だよ。おまえが居なきゃ生きてゆけねぇぐらい必要だよ」
「じゃあ…なんで許せるとかゆうんだよ…おまえは俺を許しちゃいねぇんだろ?…だったら、許さないって言えばいいじゃん!」
「…」
「おまえは卑怯だよ。許せねぇくせに、嘘ばっかついて…おまえを裏切った俺を…責めればいいじゃん!」
俺の言葉に麗乃は少しだけたじろいで俺を見た。
「…こっち来いよ」
「レイっ…」
手首を掴まれたまま寝室へ連れられ、そのままベットに投げ出される。
「やりたくなかったら帰れよ」
「…」
それがおまえへの贖罪になるのなら、俺は迷う事無くこの身体をおまえに捧げるだろう。


深い海の中を泳ぐようにふたり絡まりあう。呼吸もままならない程に追いつめられ、急き立てられて逃げ場を失う。縋るべき優しさも温かさも今は得られない。唯、鳴くしかなかった。
「あっ…う、ん…ああっ…」
「…ユキ…どこにも…行かせないから…」
麗乃の言葉が遠くに聞こえた。それはどっちの麗乃か、俺には判断できねぇ…ただ、差し上げた指の先に微かに触れたものが…

「レイ…ノ…」と、名前を呼んだ。
途端、動きが止まった…

仄暗い闇の中で、男の顔が浮かび上がる。
今、俺が呼んだのはこいつだった?それとも…

不意に両肩を掴まれ、力任せにベッドに押しつけられる。その強さと痛みに声が出る。
目の前の麗乃が、唸るような声で俺を呼んだ。
俺を見る麗乃の目は怒りに鈍く光り、その身体は全てを燃やし尽くすように熱い。
この目を…逸らす事は絶対にできない。何故って、俺はこれ以上おまえに嘘をつけない。裏切りたくもない。
お互いに見つめあったまま、どれくらい経ったのだろう。麗乃の口唇が苦い笑いを形作り、薄く笑ったかと思うと、繋がれた身体を嫌というほど突き上げられた。
「っ!…」身体が戦慄いた。けれども歯を食いしばって、苦痛に耐えて、目は逸らさずに…
決して憎んだりしない。
おまえを否定したりしない。
全部受け入れてやる。おまえの情熱も怒りも憎しみも汚さも、全部…

…俺はおまえを決して手離したりしない。
だから、恐れるな、逃げるな…おまえが俺を欲しがるように俺だって…







☆彡実はここは凄く悩んだシーンです

● COMMENT ●

ああ…

苦しいですね。
でも手放せないんですね。

難しいなあ~

どっちもわかるから難しい…
こういうのって妄想なんだけど、自分なりになりきって書くから、本当に悩むんだよね~
実際麗乃は嫌だと思うよ。


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