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2019-11

藤宮紫乃編 「Sonnet」 2 - 2011.01.22 Sat

2.
 頭痛に耐え切れず、目を開けたら、辺りはやんわりと明るかった。
 次に萌黄色のシーツが見え、裸の自分がそのシーツの上に寝そべっていることが判明した。

 …なに?なに?
 一体…どうした、俺。
 ボケた頭をフル回転すべき、仰向けになって天井を見つめた。
 昨日…慧一の誕生日パーティでかなり飲んだ記憶は確かにある。
 それから店から出て…道に寝転んで、こんな風に天上を…星を見た…見た、のか?
 それで、誰かが俺を抱えて…
「大丈夫か?そこのホテルで休もうか?」って、言うから「いいとも」…と、応えた…気がする。

 …まさか…
 飛び起きたつもりで、上半身を起したら、頭と腰に激痛が走った。
「いてーっ!」
 思わず、頭を抱え込む。
 頭の痛みはわかる。これはいわゆる二日酔いだ。だが、この腰のダルさはなんだ。
 それになんだか…奥の方も…痛い…
 え?…まさか、俺、しちゃったの?しかも、入れられた?
「ま、じで?」
 いや、自分の身体だから何をされたのかははっきりわかるし、こんなことで取り乱すほど、俺も若くはない。
 だが普段遊ぶにしても、タチ一辺倒でやってきた俺が、見ず知らずの奴と寝て、掘られるなんてこと…滅多に、つうか、ほとんどないぞ。
 第一、相手の顔が全く浮かんでこねえ~
「サイアクだ、これ」

 ガチャリとドアの開く音が聞こえ、バスタオルを腰に巻いた男が濡れた髪を拭きながら出てきた。

keisuke22


「あ、紫乃、おはよう。シャワーでも浴びてくれば?」
「…」
「空も青いし、気持ちの良い朝だね~」
「…あの」
「うん?」
「あんた誰?」
「え?…もしかしたら酔っ払って覚えてないの?」
「全面的にこちらに非があったと思うが…全く覚えがない」
「紫乃が俺を誘ったんだよ。身体つきが好みだからやろうって」
「…」
 名前を呼び捨てにされたことさえ、腹も立たない。たぶん、俺がそう呼んでくれと言ったに違いないのだ。
 まさにこいつのガタイが俺の好みであるのは否定できない要素だった。
 
「それに、俺をケイって何度も呼ぶから、俺もその気になったんだけど…」
「…すまん」
 そう、慧一と間違えていたんだ。たぶん…完璧にそう。あのシチュエーションからすると、そうなることも予想できた。
 しかし、そこまで悪酔いしていたのか…しばらく酒は御免こうむる。

「赤の他人のあんたを、全くもって勝手につき合わせてしまった」
 日頃の悪癖だとさすがに自己嫌悪に陥った。
「そんなに謝られても…別に俺は…楽しんだからいいんだ。それに俺、紫乃のこと気に入ったし…」
「え?」
「ね、セックスの相性も良かったし、これも何かの縁かもしれないからさあ、俺達付き合ってみない?」
「…」
 ベッドの端に腰掛けた俺の真正面にいる男をしげしげと見つめた。
 決まった相手は居なくてもこう見えても俺は、遊ぶ相手に困ったことはない。別段付き合いたい相手も探してはいない。
 よく見たら、まだ若造じゃないか。
 体格は慧一並みに整ってはいるが、童顔の顔がなんともアンバランス。目がデカイとかそういうんじゃなくて、なんかこう…愛玩動物っぽい、俺も最も苦手とする分類。つうか、そういう奴らを学校で嫌と言うほど見ているから、条件反射的に手を出しちゃならんという、職業意識に駆られるというか…
 一見大学生か、社会人成り立てか…まさか高校生じゃないだろうが。

「おまえ、歳幾つだ?」
「え?ああ、自己紹介ね。千葉啓介、22歳。聖ヨハネ学院大学の三年生です」
「…」
 驚きすぎて声が出なかった。
 なんか色々突っ込みどころがありすぎるが、なんといっても13下の奴に抱かれた事実は、いかんともしがたい。
 しかも、名前はけい、すけ…すけはどうでもいいが、けいは駄目だ。まだ傷は癒えていない。それに聖ヨハネって…不吉なキーワードが多すぎるだろう。
 こういう奴とは、深みに嵌って縁など結ぶと、後々ロクなことにならない。

「紫乃は?紫乃の方も教えてよ」
 無邪気な顔を近づけて、俺の頬を撫でる仕草に苛立つ。
 俺は撫でる手を払いのけて、無言でベッドから出た。
 下着を着けシャツを羽織る。

「聞かない方がいい」
「なんで?」
「おまえよりも年上だからだ」
「それはわかるよ。でも俺、年上が好みなんだ。紫乃はすごく綺麗だし、年上って言っても、25,6だろ?」
 25.6と言われて、嬉しく思わないわけでもなかったが、それを有り難がるほど、こっちも落ちぶれてはいない。

「ヘイ、ボーイ。残念だが俺は今年で35になるおっさんだ。こんなおっさんが相手で本当に気の毒だったと謝るが、一夜の悪夢と思って忘れてくれたまえ、勿論ここの代金は俺は持つ。これは一晩付き合ってくれたお礼だ」
 すっかり整った姿を鏡で確かめた。ズボンのポケットから財布を取り出し、三万円をテーブルに置いた。
「ちょっと待ってくれ。お金なんて要らない」
「悪く思わないで欲しい。酔っ払いを介抱して、おっさんを楽しませてくれたんだから、お礼をするのは当たり前だよ。千葉くん」
「…」
「本当にすまなかったよ」
「俺は…意に沿わなかったってこと?」
「…君は良い男だよ。俺なんかより、もっと若くて良い男を捜した方がいい。悪いが、仕事があるんだ。先に帰るけれど、君はゆっくりしていきたまえ」
 精算機で支払いを済ませ、部屋を後にした。
 まだ六時前。電車で鎌倉へ帰っても学校へは充分間に合う。
 ホテルの玄関を出て外観を眺めた。
 安価なものじゃなく、洒落たラブホテルだとわかった。
 わかったが、ここへは二度と来ることもねえなと、溜息を付き、俺は駅に急いだ。
 容赦なく、朝日が身体中に照りつける。
 今日もまた真夏日だろう。


 
「よう、紫乃。元気ないね」
 職場での俺の唯一の休憩所である国語準備室で一服やっていると、宿禰凛一が顔を見せた。
 凛一はここの生徒でもないし、先生でもないが、新しく建てた聖ヨハネ学院高校の教会堂の建設責任者として、今年の初めから、度々この学校へ顔を出している。
 凛一自身もここの卒業生だし、二年間、俺が担任だった。その縁を外しても、俺の人生にとって、切っても切れない関係だってことは、理解している。
 まだ26にしかならないガキが、一流の建築家におなりになるなんて…昔の担任の俺としては、鼻が高いと自慢になるかもしれないけれど、相手が相手なだけに素直に喜べるわけでもない。

「昨晩は兄の誕生日パーティへ来てくれてありがとう。慧一も喜んでたよ」
「…」
 綺麗な顔でこういう言い方をされると、誰でもにやけて喜ぶだろうが…奴がこういう顔をする時は、絶対に気を許してはならない。
「紫乃はあれから、どうしたの?酔っ払っていたから、俺、心配しちゃったよ」
 気色悪い言い方をするもんだ。大体おまえが俺の心配をするわけもねえだろう。
「別に…家に帰った」
 顔色も見ずに、手元の答案用紙の答え合わせを続ける。
「ふ~ん。家の灯りもついてなかったし、郵便受けに夕刊も手紙も入ったまんまだったよ」
「お、まえ、なんで俺のうちの…」
 手を止めて、思わず凛一の顔を見た。
「だって、ついでじゃん…紫乃、伊達眼鏡がずれてるぜ」
「るせっ…」
「眼鏡なしの方が、色っぽくて好みなんだがねえ~」
 俺の顔に手を伸ばして、掛けていた眼鏡を取り去り、自分の鼻に掛けて「似合う?」と、笑う。
「朝がえりのあんたがベランダから見えた。どこに行ってたんだ?」
「それに答える必要があるのか?」
「家族としては当然…あるね」
「…」
 勝手におまえの家族の一員にするなっ!

 確かに俺と宿禰家は同じマンションに住んでいる。それも今年の春先からだ。
 凛一の住むマンションは俺の勤めるこの学院から徒歩十分に位置する、セキリュティもしっかりしている高級マンションだ。
 俺はそれまで、ふた駅離れた賃貸マンションに住んでいて、そろそろ、自分の家でも買おうかと思っていた矢先、俺の話をどっからか聞き及んだ凛一が、自分のマンションの9階の住人が、売りたがっているという話を持ってきた。
「中木さんっていうお年寄り夫婦だったの。俺、凄くかわいがって貰っていたんだけど、昨年の秋におじいさんが亡くなってね。それでおばあさんは息子さんのところに行く事になって、『この家を売りたいけど、見ず知らずの人には売りたくないから、凛ちゃんの知ってる方を紹介してくださる?』って、頼まれたの。で、紫乃にどうかと思って~」と、まさにラファエッロのマリアごとく、俺に微笑むわけだ。
 その天からの御託に、愚かな一粒の麦でしかない俺はただ頭を垂れるしかない。
 いや、そりゃ、俺も一応は反論したし、精一杯逆らってはみた。
 しかし、凛一の後ろにもっとも巨大な魔王みたいな奴が居て、そいつが「紫乃が俺達のマンションに来てくれたら、俺も嬉しいよ。なにかあったら紫乃を頼ってしまうかもしれないけれど、それはお互い様だな。これから先も紫乃とは家族同然の付き合いを望みたい」
 慧一の悪魔の言葉に乗せられ、いつの間にか俺には書類にサインをしていた…

 と、言う笑い話だ。
 結局住んでみると、凛一たちの家は慧一や凛一よりもその両親の住居と化していて、あいつらはたまにしか帰ってこない。したがって、必然的に俺はあいつらの両親との付き合いが多くなる。
「食いっぱぐれがなくて良かったねえ~」と、凛一はせせら笑う。
「体よく、てめーらの代わりに親の面倒をみさせやがって」
「ワコさんも料理の腕を揮えるし、親父もいい将棋の相手が出来たと喜んでいるよ。紫乃も親が居ないから、親代わりに甘えればいいじゃん。俺達も紫乃が両親の傍に居てくれれば安心だしね~」
「初めからそれが目的だったんだろっ!」
「お互いに幸せでいられれば最高だろ?俺達はみんな紫乃が大好きだもんね」
 そう言って、凛一は俺の頬にキスをする。

「あ、キスマーク見っけ!」
「え?」
「へえ…それで朝帰りだったわけね」
 ニタリと笑う凛一は、地獄の公爵と化す。


凛一フォト3

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