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2019-09

藤宮紫乃編 「Sonnet」 5 - 2011.02.17 Thu

sino12


5、
「こちらから見ると学校全体が良く見えて綺麗だね」
 柵に寄りかかった千葉の隣に近づき、運動場から体育館、教会に繋がる景色を眺めた。
「ああ、そうだな」
「ここの教会も体育館もなんかすごくかっこよくて立派だし、高校って感じしないよね。俺の母校とはえらく違ってて、やっぱり都会だなあ~って思った」
 教育実習生は自分の母校へ実習へ行くのが普通だが、千葉啓介はこの学院の卒業生ではない。
「千葉は確か…北海道だったよな」
「うん、札幌。って言っても岩見沢に近いから田舎だよ」
「北海道は高校の修学旅行で行ったっきりだな。スキー旅行だったから、銀世界の景色しか記憶にないけど」
「そうだね。まあ、雪ばっかりだし」
「じゃあ、千葉もスキーは得意なんだろうな」
「…もう、飽きたかな~物覚えがついた頃からずっと滑ってたから、今は滑りたいとも思わない」
「そういうもんかな~」
「そういうもんよ。それよりさ、あの教会って建ったばかりだろ?」
「ああ」
「新築したばかりのものってどこか、緊張するっていうか…建物もこちらの方も人見知りする気がするけど、あの教会ってびっくりするほど、こちらを受け入れるんだよね。最初見て、中に入った時、なんか暖かい隠れ家に招かれた気がして…俺、教会ってあまり知らないけど、こんな感じは初めてだったんで驚いたよ。よほどの感性の人が作ったんだろうね~」
「…」
 そいつは才能も見た目も神に愛されているが、性格は悪魔だぞ。あの悪魔が感性であれを作ったとすれば、本物の悪魔もああいうものを密かに欲しがっているのだろう…と、俺はあの教会へ行く度にそう感じてしまう。
「それに体育館も同じ感覚があった。周りの風景と溶け合っているっていうか…同じ人がデザインしたの?」
「違うけど…」
 違うがロクでもねえ兄弟だ。
「なんかねえ、ここ、俺の知ってる世界とまるで違って…平和って言うかさ。守られてる気がするよね」
「ミッションだから、神様のテリトリーにあるんだろうよ」
「男子校でもみんな綺麗で素直で良い子ばかりだろ?まさかゲイの巣窟じゃないよね」
「当たり前だ。そういう奴が居ないわけじゃないが、殆どはまっとうな…そうでもないかな」
 苦笑いをする。
「紫乃なんか生徒達にモテて引く手あまた?」
「モテたって、本気になるわけないだろ?お山の大将がいい所」
「そうかなあ~本気で紫乃の事好きな奴だって沢山居るはずだと思うけど…」
「だからってそいつらの好意を全部受け入れるわけにはいかないだろ?」
「…俺、紫乃の事、本気で好きだよ」
 俺を見つめるその目にいつわりが無いとは思えるけれど…まともじゃない。この空間が生み出す魔法でしかない。

「この学校の規則知ってるか?」
「え?」
「教師と生徒、教師同士の恋愛はご法度だ」
「へ~、生徒と恋愛するのは駄目ってのはわかるけど、なんで教師同士で駄目なんだよ」
「…男性教師しか居ないから」
「あ、そう…で、ホモの教師は紫乃だけじゃないだろ?」
「さあ、表面上は何も無いさ。仮にもキリスト教を学ぶ場所だからな。だが、もし生徒と恋愛しても生徒が卒業すれば規則に縛られない。その後くっついたという話は珍しくはない」
「紫乃は?そういう生徒…いた?」
「こちらから生徒には手を出さない。俺も職を失いたくないんでね」
「そう…、じゃあ、学校以外で付き合っている人はいるの?」
「今はフリーかって聞いているのか?」
「そうだよ」
「ずっとフリーだよ」
「けい…いちっていう人は?…紫乃の恋人だろ?それとも振られたの?片思い?」
「しつこいな。それをおまえに話す必要があるのか?」
「あるよ。だって紫乃は最初、俺をその男と間違えたんだから。俺とセックスしている間、あんたは俺を『けいいち』って呼び続けた」
「…」
「聞く権利、あるよね?」
「その件は謝ったつもりだったけどな」
「3万円貰って忘れろって?」
「…」
「じゃあ、返すよ」
 そう言って、千葉は財布を取り出して三万円を差し出した。受け取らない俺の手を取り無理矢理握らせる。
「俺は忘れたくないからね。あんたと寝たのも、『けいいち』っていう男に間違えられたのも、大切な事実だよ」
「金を…出したのは悪気があったわけじゃない。酔っ払った俺が悪いと思ったからだ。千葉に嫌な思いをさせたのなら謝る」
「啓介って呼べよ。それとも『けいいち』って人を思い出すから、呼ぶのに躊躇いがあるの?」
「け、いいちは…俺の昔の恋人だった奴だが…今はいい友人だ。それだけだ」
「…じゃあ、俺の事、啓介って呼べるよね」
「なんでそこに拘るんだよ」
「紫乃が…俺をケイって呼んだ時…俺、すごい感じたの。この人が好きだ。この人を抱きたいって、すげえ思った。だから呼んでもらいたい」
「…」
 あまりに単純すぎて思わず、笑ってしまった。
「お、おかしいか?」
「じゃあ、余計に啓介とは呼べまい。仕事中に卑猥な妄想されても困る」
「…」
 顔を赤らめてそっぽを向く様が、ますますガキで可愛く思えた。
「でも、ふたりの時は啓介って呼んでやるよ。それでいいだろ?」
「!ホント?」
「だからってその気になってもらっても困る。俺たちは恋人でも何でもない。実習生と指導教師だ」
「たったひと月の間だろ?それからは…俺はここには関係ないもの。自由に紫乃を愛せるよね」
「…ああ、そうだね」
 ひと月経てば、きっとおまえも気が付くさ。
 ここは閉ざされた楽園。外へ出ればここであった事なんか忘れてしまうって事を。

啓介g



 昼食時の千葉の手作り弁当は、記録を更新し続けた。
「ねえ、今日の蓮根のきんぴらどう?」
「…普通」
「紫乃先生の普通は美味いってことだから、合格だね」
 無駄に声が弾んでいる。
「紫乃先生はいい実習生をもって幸せだなあ~うらやましいよ」
 おいおい、周りの教師達のいいネタにされてるぞ~
 …げっそりだ。
「千葉先生、僕らにも手作り弁当お願いしますよ」
「それは、無理です」
 おい、即答かいっ!少しは躊躇してみせろよ。
「でも、今度クッキー作りますから、先生方にもおすそわけしますね」
「そりゃ楽しみだ」
 和気藹々とはこのことだろう。千葉がいると周りの空気が和む。


「こんにちは~」
 準備室の戸が開けられると共に、聞きなれた声が弾む。
「おお、宿禰くんか」
「目の保養が来たな~」
「また口が上手いなあ~。はい、これおみやげで~す。皆さんでどうぞ」
 菓子箱を一番年上の教師に渡して、にこやかに愛嬌をふりまく。
 周りの教師に媚を売ることも怠らない奴の性格がうらめしい。

「よう、紫乃。お土産だよ」
 手渡された箱を見る。
「…なんで『ちんすこう』なんだよ」
「沖縄行ったから」
「一昨日、ニューヨークから帰国するとはメールで聞いてたけどな」
「そうだよ。成田からそのまま沖縄まで行ってお仕事だったの。んで、さっき帰ってきてここへ直行~。それよりさ、美味そうな弁当食ってるなあ~どれ」
 許可も得ないまま、俺の弁当箱からきんぴらをつまんで食べやがった。
「なかなか美味いじゃん。…へ?これもしかして手作り?」
「…」
「紫乃先生の昼食は実習生の愛情弁当なんだよ」
 お土産を広げている教師達が、ご機嫌な顔でいらぬことを口走る。
「へえ~そうなんだ」
 まったくもっていい迷惑。ほら、こいつの目が輝きだしたじゃねえか。
 凛一は俺から隣りの千葉啓介の方へ視線を移した。
「こんにちは。宿禰凛一です」
 凛一は例のごとく、首をかしげ千葉にあざとい微笑を向ける。
「…」
 千葉は硬直したかのように目をぱちくりとしたまま動かない。
「…おい、千葉?大丈夫か?」
「…あ、…はい。あ!すいません。え、え~と、こんにちはです。初めまして、千葉、啓介と申します」
 いきなり席を立って、直立不動のまま凛一に向かってお辞儀をする。
「千葉…けいすけ?ふ~ん」
 凛一は、固まった千葉に近づき、頭からつま先まで舐めるようにひととおり眺めると、ニコリと笑う。
「千葉君、いくつ?」
「あ、はい。に、じゅう、に、才です」
「そっか、若いね~ちょっとハグさせてね」
「え…ええ?」
 驚いている千葉にも構わずに、凛一は千葉を思い切り抱き締め、そしてその感触を確かめると満足したように千葉から離れた。
 千葉は倒れそうなぐらい真っ青になっている。
 さすがに気の毒になって、座るように促した。
「凛一、免疫のない奴におまえの挨拶はセクハラなんだよ。少しは手加減しろ」
「へえ~、啓介くんってウブなんだね~。体格も好みだし、気に入ったよ」
 そう言いつつ、不敵に笑う凛一は、椅子に座ったまま顔をあげることができない千葉を執拗に見つめ続けている。
 これ以上、千葉がメドゥーサの魔力に取り付かれたままになっても困る。
 俺は、凛一の腕を引っ張り、準備室から出た。


凛一煙草
↑お久し凛一たん(*´∇`*)

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● COMMENT ●

真正面な千葉の想いを 紫乃は ちょっと軽く 考えすぎでは?
まだまだ ドンドンと 猛進して来ますよ~啓介は!
最後の最後に アタフタとする 紫乃が うかびますアタフタ((ヽ(;´Д`)ノ))アタフタ

そして 凛一の特別出演!本当に ありがとう御座いま~す♪┏○ペコ
しかも  美麗な絵までもーー!(*・ω・*)

リンの登場で 紫乃と啓介の関係が 僅かでも 縮まればいいなぁ゚+。スリ(*u_u人u_u*)スリ。+゚...byebye☆

けいったんさん>ありがとうございます。
啓介は純粋に頑張りますよ~
紫乃は慧一の毒気から抜け出さなきゃならない。
アト/ピーでいう脱ステ/ロイドですなwww
綺麗になっていく紫乃たんをお楽しみに~

凛はどんなに描いても凛になるね(;・∀・)


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