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2019-09

僕の見る夢 5 - 2008.11.28 Fri

3.

翌日、朝早くから岬が見舞いがてら朝御飯を作って持ってきてくれて、三人で食べる事になった。
「せっかくの二十七の誕生日を病院でおくるとは、レイくんもほんとダセエ男だぜ」岬は弁当を広げながら皮肉った。
「いや、ユキが居るから最高の誕生日なんだって」と、麗乃が嬉しそうにカラフルなおにぎりをほおばった。
麗乃は終始ご機嫌だった。
岬は昨日の俺への態度はきれいさっぱり忘れましたみたいな顔をしてたから、俺も気にしないことにした。
「何だよ、おまえ、全然元気じゃん。心配して損した」
「心配かけて悪かったな、岬」
「もう慣れたっちゃー慣れたけどさ。頼むからもう救急車とか呼ばせんな」
「判った。反省してる。もうおまえらに迷惑かけない。約束する」
「…いっけど、さ…」苦笑しながらも何だか不安そうな岬を感じて、俺もなんか心許無くて…
「ユキ、疲れただろ?帰らねえ?」岬が俺を見て言う。
「…あ」
「いいだろ?麗乃。おまえん宅にユキ連れてって」
「いや、俺なら大丈夫だよ。疲れてねえし」
「ユキ、俺ん宅で待っててくんねえかな?」機嫌良く麗乃が言うから、まだ傍に居たいって強く言えない。
「う…ん」
「…じゃあ、行こ、ユキ」
麗乃の傍を離れたくなかったけど、二人から促されて仕方なく一旦帰ることにした。

「ユキ、昨日は悪かったな」
岬の愛車に乗ってすぐ、岬が俺に謝ってくる。
「あ…うん、いや、岬が怒るのわかるし…俺何も知らなくて…馬鹿だね、俺。麗乃が元気だとばっか思ってたし…こっちでどう暮らしているのか知らねえ癖にさ、のこのこやって来てさ…ホントごめん」
俺の言葉に返事もせずに、岬はアクセルを踏んで、猛スピードで大通りを飛ばした。

「…おまえさ…あいつからなんも聞いてないの?」
「えっ?何を?」
「何って…色々だよ」
「なんも…聞いてない…」怖くて聞けなかった。
「はあ~…もうね、俺にもどうすることもできねぇわけよ」
「?」
「見ただろ?さっきの香月の顔」
「うん」
「あんな顔して笑ったの、いつ以来だよって話」
「…そう、なの?」
「…おまえにしか、救えないのかもしれねぇって、ね…」
「あ…岬?」
「こんなの言うの、なんか悔しいつーか…おまえにとっても迷惑だろうけどな…あいつを…香月を助けてやってくれ、頼むから」
「…あ、あのさ…助けるって…どうやんの?」
「…おま、え…ハハ…負けたわ…」そう言って岬は笑いながら、車を飛ばし続けた。

香月の家に着いて中に入ったら、ソファで休んでろと言われ、座って呆けてたらコーヒーが目の前に出された。
こっちの岬も気が利いてて凄いなぁと思って、ひとりで笑ってたら、岬が不思議がるので、向こうの岬の事を少しだけ話した。
「…そうなんだ。そんないい奴なんだ。おまえの世界の俺のそっくりさんは」
「うん。あのね、岬とは一番付き合いが長くてね。凄い楽しいの。いっつも、笑わせてくれてね。俺達のこと守ってくれて…あ…ごめん」
「いや、わかるよ。そいつがおまえの事大事に思ってるってわかるよ。だから…わかるよな、俺達がずっと一緒に過ごしてきた香月の事がどんだけ大事かって大切かって…ユキ、わかるだろ?」
「…うん」
「言いたくないけど…おまえを好きになったのはあいつだから、おまえの所為とか言えるわけねえんだけどさ…おまえが…こっちに来なかったらってさ……悪い、おまえの所為じゃないのは判ってる。でも…おまえ、また帰っちゃうんだろ?居るつったっていつかは居なくなるんだろ?そんなの…麗乃がかわいそうすぎる。…もう俺な、あいつの苦しむとこ…見たくねえんだわ…」
岬の両目からポタポタ零れていく涙を見て、俺はどうしようもない自分の浅はかさに吐き気がした。



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