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2019-09

僕の見る夢 8 - 2008.11.30 Sun

「あ…」
目を開けたら見慣れた顔が目の前にあった。でもすぐに気がついた。こいつはあっちの麗乃じゃない。
「ユキ、おはよ」
「…はよ…って、朝?」
「そう…みたい」
俺は驚いて上半身を起こした。
だって、昨日寝たの、夕方だったでしょ?もう今、朝って…どんだけ寝てんだよ。
カーテンから覗く光もまだ薄暗いけど、夕方の色じゃねえし…
「でも、まだ、六時前だけど…」多少掠れてっけど、しっかり起きてる声で背後から麗乃が言う。
六時前つっても、寝たの六時前だったろ?…十二時間も寝てたのかよ…すげーぜ。こんだけ寝貯めしたの久しぶりだぜ。
「ユキ?どした?」
「は?」
「なんか考え事?」
「いや、なんかすっごい寝てたんだって思った」
「な、俺もこんなに寝たの、久しぶり過ぎてびっくりした。ユキが…居てくれたからなんだろうけどな」
「…んあ…う…んなこと無いと思うけどさ」
「俺さ、ユキが居なくなってからあんま良く寝られなかったから…」そう言って麗乃は自虐的に笑った。
「自分でな…馬鹿だって思いながら、どうしても諦めきれなかった…ホントにどうしようもねえ馬鹿だ…」
「麗乃」
「おまえがね、あん時俺の事忘れたりしないって言ってくれたろ?…すげ…嬉しかったんだよ。おまえが向こうの世界でどう生きようが俺はその言葉だけで生きてゆけるって…思ったんだけどね…」
「…」
「全然駄目だった。おまえの事思うだけで苦しくて堪んなかった。おまえが…向こう俺と…」
「いいよ、もう…もういいから。ごめん、もうおまえから離れないから…」
俺は仰向けに寝ている麗乃の身体に覆い被さるようにして、その幾分細くなった身体を抱きしめた。
目の前にいる麗乃は、消毒の臭いとそれから、向こうの麗乃と確かに同じ匂いがした。

俺は…とんでもない思い違いをしていた。
向こうの麗乃とこっちの麗乃と、ふたりを好きんなって、苦しいのは俺だけなんだって、勝手に思い込んでた。
苦しくても俺が狂わないでいたのは、向こうの麗乃がずっと傍にいてくれたお蔭だった。落ち込んだ時も泣いてた時も抱きしめてくれるあいつの腕があったからだ。こっちの麗乃を好きでいても、全部ひっくるめて好きだと言ってくれたあいつが居てくれたからだ。
だけどこいつは…こいつはひとりで…ひとりぼっちで、俺を思ってくれてて…ずっと苦しんできたんだ…
なんだよ俺は…どうしようもないのは俺の方じゃないか。

「ユキ…?」
「ごめん、麗乃、ごめんね」
「昨日から謝ってばっかだな、ユキは。俺ね、謝るつーのは簡単に物事を片付けようとする常套手段って気ぃするんだけどな」
「…なんだよそれ。それって俺が心から謝ってないみたいな言い方じゃん」
「ほら、ユキらしくなった」って、嬉しそうに笑うから俺も釣られて笑ってしまった。

「キスして…いい?」
麗乃の声が震えていた。返事はせずに俺の方から口唇にしてやると、ちょっと驚いたけど、すぐに嬉しそうに笑ってくれた。それからお互いの頬や額とかに触れるだけのキスを一杯した。
目を合わせてみたら何だか可笑しくなって、また麗乃を抱きしめて、耳の横んとこに頭を擡げた。
すると、麗乃の手が俺の頭を撫でてくる。

「…なあ、ユキ」
「ん?」
「今だけは、ユキのこと、俺だけのもんって思ってもいいか?」
「…いいよ」いいに決まってる、そんなの…
「ホントに?」
…そんな弱気になるな。おまえらしくねえじゃん。
どんなにこいつをひとりにして苦しめてきたのかと思うと、胸が締め付けられて息が止まってしまう。
本当に…本当にごめん。
「レイくん、俺もうどこにも行かないからね」
「…うん、ありがと、ユキ。嬉しいよ」
傍に居てやれることが罪滅ぼしになるんなら、死ぬまで傍に居るよ。本気でそう思ったんだ。

それから俺は麗乃の傍を片時も離れなかった。一緒に飯食ったり、買い物行ったり、風呂入ったり。
暇な時は俺をモデルに麗乃は絵を描くことに夢中になっていた。
「俺ばっか描いて、よく飽きないね」って言ったら「おまえは山の天気みたいで全然飽きねえ」って、言われた。予測できねえって事らしい。描いてる麗乃はすこぶる機嫌がいいからモデルでも何でも構わない。そうやって元気になってく麗乃を見てるのが嬉しかった。
手首の傷も四針程縫っていたけど、抜糸をして包帯を外したら、案外と目に留まらなくなって俺も気にならなくなった。

傍から見れば普通の恋人同士に見えただろう。岬も眞人も元気になった麗乃を見て、凄く喜んでくれてたし、麗乃も変わらずに優しかった。
ただ、麗乃は一度も俺を抱こうとはしなかった。
初めは体力の所為とか思ったりもしたけど、違う。敢えて抱こうとはしない。キスとかはしたがるのに、なんでだろうと思って、こっちから仕掛けても絶対に乗ってこなかった。
何で抱こうとしないのか訳を聞くのはかなり怖い。

…もう俺の事はそういう意味で嫌になったのかもしれない、なんて思ったりもしていた。





夜にアップしたりする。

● COMMENT ●

う~ん

誰の立場に立ってみても、みんなそれぞれに辛いです。
とくに向こうで放っておかれてる麗乃が不憫だ…。
どうか彼に救いを!

でしょ?

でも向こうの麗乃といちゃつくとこっちの麗乃がかわいそうになる…そこが狙いなんだもんな~www
ユキくんが一番悩みそうだけど、案外自己中なとこあるしな…
救い…さあどうなる?


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