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2019-09

純愛クリスマス(リンミナ番外編)前編 - 2011.12.24 Sat

クリスマスイルミネーション


『久しぶり、ミナ。ねえ、25日予定ある?』
「…」
 久しぶりどころか、一年以上音沙汰無しで、もう、綺麗さっぱり忘れられたかとこちらも諦めようと折り合いをつけ始めた頃になって、これだ。
 久しぶりに聞いた携帯電話の着メロ。
 彼専用の曲だ。
 だから電話が鳴った時、心臓が止まるほど驚いて、痛いぐらいに鳴る鼓動の音を悟られないように、平然なフリをして通話ボタンを押した。
 
 …懐かしい声が聞こえた。


純愛クリスマス  前編



「25日?」
『そう。ね、折角のクリスマスだしさ、一緒に食事しようよ』
 24日はいつものように季史さんとふたり、うちでほっこり、鍋パーティだが、25日は季史さんは泊まりの仕事で家には居ない。
 俺とはと言うと…別段予定がない。
 それでも昼間は美桜堂とギャラリーの店番がある。
「仕事で忙しいんだ」
『店番だろ?夕方で終わるじゃん。それからでいいから新宿まで出ておいで。いいね』

 すぐに承諾はせず、曖昧に返事をぼかしたら「じゃあ、待ってる」と、言い残して切れた。
 …いや、OKしたつもりは全然ないんだが…
 大体おれ達、会ってもいいのか?
 純愛を誓ったのに、ホイホイ出かけて守れるのか?…え~と、純愛って奴を。
 でも「待ってる」って、言ってた。
 奴が待ってるって言ったら、翌朝まで待っていそうで、怖い。

 結局、25日。ちょっと早めに店を閉め(どうせクリスマスに画材屋なんか誰も来ないさ)、慣れない三つ揃えのスーツなんか着て(おめかしして来いって言われたんだ)普段はクシも梳かないのに、ドライヤーで寝グセを直したりしてさ…う…なんかウキウキしてないか?おれ…
 これも奴の思惑通りってわけ?



 予定よりも渋滞で遅れてしまった。
 午後7時半、電話で言われたとおりの場所へ着く。
 新宿なんて、仕事以外では滅多に行かないから、ここが約束の場所なのかどうかさえわからない。
 キョロキョロと辺りを見回すと、道路の向かい側で手を振る影を見つけた。
 暗いからはっきりと顔まで見えなかったが、モデルみたいなスタイルの奴を間違うわけがない。
 俺は横断歩道が青になるのを待って、急いで駆け寄る。
 良く見ると奴はタキシード姿だった。
 なんで?と、疑問に思ったけど、アイツがおれに向かって近づいてくるから、そんなことはどうでも良くなってしまった。

「遅れるって連絡あったから心配した」
「ゴメン」
「ミナ、メリークリスマス。良く来てくれたね」
「…リン」
 懐かしい。
 一年以上、直に会ってないはずだった。
 思ったとおり、顔を見ただけでおれの胸が高鳴り始め、次第に割れるように響いていく。このままでは心臓が破裂して死ぬんじゃないのか?おれ。
 できるだけ目線を合わさぬようにした。
 
 大体…こうしていること事態おかしいはずなんだ。
 お互い一緒に暮すパートナーが居るのに、こうやってふたりだけで夜のクリスマスに会うなんて…まるで密会…みたいじゃないか。
 本当はこんなこと…許されることじゃないのに。
 後ろめたいはずなのに…
 自然と口がにやけて、緩んでいる。顔が火照っているのが自分でもわかる。胸はときめいて高鳴る鼓動は収まりそうもない。

 思い切って口を開く。
「リン…やっぱりふたりだけで 会うなんて…」マズいよ…
「寒いからさ、さっさと店に入ろうぜ。みんなも待ちくたびれてる」
「…は?みんな?」
 
 リンの後を追って建物に入っていく。
 店の中は漆喰の壁に包まれ、幾何学模様のタイル張りされた装飾が美しい。床のモザイク模様のブルーのグラデーションも、ライトの加減で水際を歩いているような感覚を味わえる。
「ステキな建物だね」
 何気に呟いたおれに、前を歩くリンが振り返る。
「ここさ、春に俺が建てた店なんだ。古代ローマのヴィラ風にしてみたんだけど、どう?」
 どうって言われても…
「いいんじゃない」と、しか言いようがない。おれ、建築のことなんかわかんないし。
「洋風の創作レストランだけど、オリジナルカレーがすごく美味いよ」
「へ~、そうなんだ」
 そうか、リンが建てたのか。そう思うと、時間をかけてじっくり眺めたくなる。
 ああ、すごいな。漆喰の壁もちゃんと塗りこんであるんだ。ところどころにフレスコ画のような淡い模様が描き込んである。その周りをなぞる様に配置されたタイルの模様もまた、アラベスクとは違って面白い。
「ミナ、こっちだよ」
 階段を昇るリンが、振り向きながらおれを呼ぶ。

「リン…あのさ、みんなって誰?」
「ミナも知ってる人達だよ」
「そう…なの?」
 …誰だろ…まさか慧一さん…じゃないよな…

 個室だろうか。二階の一番奥の扉を開け、部屋に入ったら、懐かしい顔が見えた。
「よお、水川。久しぶり~」
「元気してたか?」
「一応、おまえの絵を買ったぞ。複製だがな」
「水川、ここ、ここに座れ」
「ああ、サンキュ」
 聖ヨハネ学院高校時代の仲間達だった。

 美間坂さんと桐生さん。根本先輩。同級生の高橋と三上。そして…リンの隣りで、根本先輩の横に座る男性に覚えがない。
 おれは言われるまま、高橋と桐生さんの間に座った。
「久しぶり、水川」
「ああ、高橋。元気そうだね」
「まあね。28になってもまだまだ下っ端でさ。上司からどやされながらも地道にやってるよ。おまえこそ、頑張ってるみたいだな」
「それなりにな…それより、高橋…」
「なんだ?」
「根本先輩の横に座る人誰?」
「ああ、…先輩のコレ」と、高橋はテーブルの下で小指を出す。

 …そうなのか。でもなんで?
「みなっち、久しぶり~」
「根本先輩も元気そうで何よりです。今日はわざわざ大阪から?」
「違うよ~。去年からボクはこっちの出版会社で編集のお仕事やってんの!」
「…そうだったんですか」
 全く知らなかった。大阪のマスコミ関係で派手にやってるのかと思ったら…出版社とか…どこまでマルチな人だ。
「で、こっちは真朱光(まそおあきら)クン。ヨハネではみなっち達より一学年後輩だったんだよ」
「そうだったんですか…」
 言われても覚えがない。
 まあ、同級生さえ、全員覚えているかと言われれば、自信がないと言い切れるのだから、後輩なんか知るわけがない。
 良く見れば…確かにネコ先輩好みの、体格のいいスポーツマンタイプで精悍な顔つきなんだけど、どっか気だるい印象をかもしだしているし… 
 そいつは隣りに座るリンと、しきりに親しく話しかけている。
 なんかちょっとムカつく。
 と、言うか、なんで久しぶり会うのに、会話もできないほど離れて食事しているわけ?
 そりゃ、すげえ食事は美味しかったし、みんなと久しぶりに会えて、話して楽しかったさ。でもおれの一番の目的は… 
 リン、おまえと一緒に…
 
 トイレに立ち上がって部屋を出たら、廊下でさっきの真朱って奴とすれ違う。
「水川さん」
「あ、はい」
 並んで立ってみると、思った以上に上背もあり肩幅も広い。肌も健康的に焼けてるし…俺とは全く違うタイプだなあ~
「俺、宿禰さんとは高校の部活で一緒だったんです」
「そうなんだ」
「ずっとあの人に憧れていたんですよ」
「…そう」
「あの頃、水川さんに妬いてました」
「はあ」
「まさか、今でも続いているって事は…ないですよね」
「無い、無い」
「そうですか…良かったです。じゃあ」
 明らかにほっとした顔を見せた真朱は、一礼して部屋に戻って行く。

 今更だが、リンは色んな奴から慕われていたんだなあ。あの頃、付き合っていたおれを快く思わないのはあたりまえか… 
 高校時代の感情を、こんなに大人になってもまだ保っている彼を、嫌いにはなれなかった。

 
 食事会ってことで、酒もあまり入らない内に、散開となる。
 幹事のリンはひとりずつに丁寧な挨拶をしながら、彼らを見送った。
「ミナは電車だよな。俺も駅前のホテルだから、駅まで一緒にいこう」と、ふたりでタクシーに乗り込む。
 車内でも他愛無い話しかしなかった。懐かしかったとか、誰彼はおっさんになったとか…いや、まだみんな二十代だよ、と、反論したが。
 そうだよ。天から選ばれたようなおまえと、一般人のおれ達を見比べる時点で間違っているんだって。
「…あの真朱(まそお)って子さ。リン、仲が良かったの?」
「ああ、光(あきら)は『詩人の会』の後輩で、部長だった俺の後を継いだんだ。それよりさ、あいつ、その頃は俺のシンパだったって。今日初めて聞かされたんだが、全く知らなかったわ…そういや、当時、やけに俺の傍にくっついてたなあ~」
「…」
 今頃になって、気づくおまえが怖いよ。
「まあ、今でも俺が好きって言われたけどね」
「え?でも、彼はネコ先輩の恋人だろ?」
「いや。光(あきら)はなんか、エロゲのシナリオ作家で、たまたま先輩が担当で、それで今夜誘ったら、来るって事になったらしい」
「エロゲって…アダルトゲームのことだよな」
「うん。需要あるみたいだね。そこから一流の作家になってる人も多いし。先輩も期待してるって言ってたぜ」
「ふ~ん。それで?」
「なに?」
「リンは気に入ったの?」
「光(あきら)の事?」
「…うん」
「一回、寝てくれって言われた」
「え?」
「どっち?って言ったら、『先輩のお好きな体位でいいです』って、言われた」
「…」
 なんてこった。聞かなきゃ良かった。
 タクシーの中で、こういう話はやばい気がしたから、それ以上は話をしなかった。
 
 駅前でタクシーを降りる。
 どこもかしこもクリスマスイルミネーションがきらびやかに輝いていた。
 まだ真夜中という時間でもないから、大勢の行き交う人達でにぎやかしい。
「じゃあ、ミナ。気をつけてね」
「…うん」
 握手を求め、差し出すリンの手を見つめた。
 本当にここでさよならしてもいいのか?久しぶりに会えたのに…もっと沢山話したいことがあったのに。
 いや、これ以上、こいつと会って、話をして、一緒に時間を送れたとして、行き着くところは決まっている気がする。
 こいつが…もし、おれを求めれば、おれは断れない。断ったとして、それでふたりに何事もなくてもおれは後悔する。
 どっちにしろ…おれの頭痛の種はもうすでに蒔かれている。
 今のおれの想いは、このままリンと離れたくない。ただそれだけだ。
 だけど、それを言葉にできない。
 
 何も言わず、握手するわけでもなく、立ち尽くしたおれに痺れを切らしたのか、リンは差し出した手を引っ込めた。
「今夜、季史…さんは家?」
「え?…いや、彼は仕事で居ないんだ」
「じゃあ、今夜のミナはフリーだな」
「フリーとか…言うな」
「クリスマスの夜を、ひとりで過ごすなんて、寂しすぎるだろ?ミナ、今夜は俺と居ろよ」
「え?…だって…」
「安心しろ。何もしないよ」
 タキシードにカシミヤのコート。隙の無い身のこなし。どっから見ても紳士に見えるけど、俺はこいつの本性を知ってる。だからリンの言葉を鵜呑みにするほど、バカじゃない。
 
 …バカじゃないと思ったけれど…
 
 掴まれた手を振り放す気になれないおれは…正真正銘、本物のバカなんじゃないのだろうか。




後編へ

クリスマス特別企画です。
明日は後編をアップします。後半は正直、怒涛の雪崩だと…(;´∀`)
いや、久しぶりに書いて、楽しかったです。



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● COMMENT ●

ひさびさ~~懐かしい二人だ。
思わず、少年マガジン……もとい、「green house」を取り出してみた。

後編で、タイトルの「純愛」が消えるほうに一票♪

コメントありがと~(*´∇`*)

ミナがリンに勝てるわけないわなwww
しかしHシーンは一切ありませんぜ(;^ω^)
延々とくだらん話です。
それがリンミナスタイル。
もとい、サイアートテイスト。

来年もよろしく。

リン♪(つω`*)ポッ ミナ♪(⌒o⌒)
(」゚Д゚)」<<<< ヨッ、ご両人!待ってたよ~♪

このお二人さんは、体的には ”今は”純愛ですが、精神がねぇ~絡みついて 既にひとつになっていると、思うのですよ私は!
これほど 互いのパートナーにとって 厄介な存在はないでしょうね(*⌒^⌒*)b うふっ

「後編」では、一年ぶりの再会で 更に深く強く契られた絆を築きあげられるのかな♪
v( 。ゝェ・(´-ω-`。ゝ ギュッ ♪...byebye☆

Hシーンが無いと言ったのは間違いでした。HシーンはあるけどH描写はないということでしたわ。

あの別れかれ三年が経っているんですよ。
その間、ちらほらと同窓会やら仕事関係であったりはしている。(ふたりではないけどね)
後半は…気に入ってもらえたら嬉しいです。
かなり自分では楽しかったので。
しかし…まだまだ書き足そうと思ったら、できた。
特にこの食事会の8人の会話なんて、色々考えていたんだが、もうね、そんなことやってると延々と長くなるからばっさりと止めました。
後半もかなり削っていますが…その行間も楽しんでもらえばいいなあと思っています。

明朝早くに旅行に行きますので、お返事は水曜日になるかも~です。


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