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2019-12

This cruel world 3 - 2012.03.30 Fri

asutaroto98.jpg

3、
 神獣「セキレイ」はすくすくと育ち、一年も経つと成獣になった。
 小さき神子ふたりが乗っても充分な大きさだ。
 ふたりは「セキレイ」に乗り、行きたい場所へ飛んでいく。
 クナーアンに住む者は、空を飛ぶ青い神獣を見かけると手を振り、歓声をあげる。
 神の恵みを得んと。

 神子は好奇心旺盛の為、しばしば民の下へ忍び込み、その生活の様子を伺う。
 勿論フードを深く被り、目立たぬように、巷の子供と同じ恰好で、町や村を歩き回るのだ。
 特にアスタロトはそういう冒険じみたことを好み、田を耕す人々の様子を見たり、果実の取入れの手伝いをしたり、実りを祝う祭りを一緒になって歌ったり踊ったり…およそ神子の行動とは思えない有様だ。
 時にアスタロトの正体がばれ、民を驚嘆させることもあったが、大方彼らはそんな神子を愛すべき尊き者として歓迎する。
 この神子が豊穣をもたらすという二重の意味でアスタロトを最高神に奉るのだ。
  
 イールはアスタロトの行動を制したりはせず、かといって常に一緒に在ることもしなかった。
 アスタロトに誘われ、たまに民衆に歓迎されることもあったが、イールはアスタロトとは別の役目を演じなければならない存在だと知っていた。
 アスタロトが民衆に近しい存在の神ならば、イールはもっとも遠い尊厳の神にならなければならない。
 奉るふたつのものを同じ色に染めてはならない。 
 彼はその意義を知っていた。
 
 自分より民に深く広く愛されるアスタロトを、イールは妬かなかった。彼にとってアスタロトは守るべき半身となっていたからだ。
 遊行し、夜遅く帰るアスタロトに世話係や教師の説教を代わりに受けたり、服のままベッドに寝るアスタロトの服を着替えさせたり。
 イールはアスタロトを愛していた。
 彼の好奇心やこの星を愛する誠実な志が、どうしようもなく愛おしくてならない。どうしたらこの半身に自分の心をわかってもらえるのか、悩んでしまう。
 もとよりイールとアスタロトは天の皇尊より祝福された一対の恋人なのだから、愛し合うのは当然だ。だが精神の成長は人と同じで、個々による。
 アスタロトよりイールの方が性の目覚めは早かった。
 イールはまだ目覚めないアスタロトに欲情してしまう自分を悟られるのが嫌だった。
「ねえ、アーシュ。僕達、もうすぐ12になるよ。誓いを立てたらね、契りを結ぶんだよ…君はその意味わかっているのかなあ…」
 すうすうと寝息を立てるアーシュの額に、イールは「早く目覚めよ」と、キスを落とす。



 12歳を迎えたイールとアスタロトは、礼服を纏い、昇殿へ向かった。
 天の皇尊(すめらみこと)の祝福を受ける為だ。
 ふたりにとって天の皇尊との対面は二度目であり、祝詞を戴く最後なのだと言い渡されていた。
 今回は御使いであるミグリが控えていた。
 ミグリとは「セキレイ」を強請った以来、何度も彼を呼びつけ、勝手な無理を願っていたのでふたりにとっては顔馴染みであり、ミグリにとっては世話の焼けるやんちゃ坊主共、であった。
 光輝く天の皇尊の姿は変わらず眩しかったが、当然に魔力のついたふたりにはその姿を伺い見ることは難しくはなかった。
 ただ、ミグリは頭を垂れないアスタロトを手で伏せる様に命じ、アスタロトはしぶしぶそれに従った。

「クナーアンの幸をもたらす神、イールとアスタロトはこれから長き未来を共に歩んでいくのだ。ふたりがお互いを愛し、愛され、慈しみ、敬い、喜び、泣き、そして安らかに眠ることを願う」
 天の皇尊の言葉を疑う必要はなかった。が、アスタロトには胸に収めきれない疑問があった。
「天の皇尊にお答え願う。…私たち神は不死と言う。ならば神の安息の日とは何時なのでしょうか?」
「慎め」
 ミグリはあわててアスタロトの言葉を制した。
 アスタロトは動じなかった。
「御方は幼い私達を両腕にお抱きになられたではないか。私は御方をご尊敬奉る。このハーラル系の一切を知らぬものはない御方なら、私達の行く末も見ておいでになられるのではないのか?人の一生は儚いものだが、意義がある。だからこそ私達の存在もまた尊き者になるのでしょう。では私達はいつまで生きながらえれば良いのか…言葉をたまわりたく存じます」
「黙れ、アスタロト、不遜であるぞ」
 容赦のないミグリの怒りを感じたが、アスタロトは目の前に輝きから、目を逸らせなかった。

「よい、ミグリ。私はこの子らが好きなのだ。私が生んだ神々の中で最も美しく、そして人らしく生きるこの子らを愛おしく思うのだ」
 天の皇尊は歩を進め、跪くアスタロトの前で腰を屈め、ふたりだけに聞こえるように囁いた。
「なあ、アスタロト。生まれて12年のそなたに、不死たるそなた達に、死を見せることは私にはできない。私はこのハーラル系を定める者だが、未来を決める者ではない。行く末を案じても、未来は変わるものだと知っておるからだ。故にそなた達の死ぬ時を教えることはできない。森羅万象は美しくなければならない。そなたのように…そして時を生きるにはその順序がある。世の秩序もしかりだよ。今は成人したおまえ達に祝福を与える時なのだ。…これで良いか?アスタロト」
「…わかりました。御方の御心をありがたく戴きます」
 アスタロトは頭を伏せ、天の皇尊の光を身に受けた。
 天の皇尊はふたりの神にそれぞれ宝玉のリングを与えた。
 イールには赤く輝く銀の指輪。
 アスタロトには薄青の金の指輪。
「成人は聖人とも言う。イールとアスタロトは人の聖なる光でもある。クナーアンが久遠の光輝く地であることを祈る」

 昇殿を出たふたりは、神殿に集まる大勢の祝福を受けた。
 イールとアスタロトの神が成人になり、若い惑星クナーアンを豊かに統治する者と天の皇尊が定めたのだ。クナーアンの豊かな繁栄が保証されたことになるのだから、民衆がこぞって喜ぶのは当然だった。
 クナーアンの至る場所で祭りは続き、神殿から見る地上は夜になっても灯りが消えず、人々の歓声が収まることは無かった。
 
 いつもなら誰彼と無く笑いはしゃぎ、共に笑いあうアスタロトであったが、今夜はそんな心境にはなれなかった。
 鬱々とした思いが、この神の口を重くした。
 考えてもどうしようもないと頭でわかっていても、釈然としない。
 彼はまだ諦めをしらない少年だった。
(理想の星とはどんな姿をしているのだろう。僕はこの惑星に住む民を、満ち足りた理想の故郷として導くことができるのだろうか…)

 麗月と瓏月が共に並び、満月の光が夜天を明るく輝かせていた。
「アーシュ、ここにいたの」
 自室のベランダで地上を眺めていたアスタロトを、彼の半身が呼ぶ。
 礼服を脱ぎ、白く丈の長いチュニックに薄い絹の上着を羽織ったイールの長い巻き毛の銀髪が夜空に昇るふたつの月の光に映え、優美な女神に見えた。
 アスタロトは一刻、イールの姿に見惚れた。
「君がいないと宴が盛り上がらないんだって…。皆待ってる」
「うん…」
「マサキも心配している」
「…」
 イールはアスタロトの横に並び、同じようにベランダの手すりに寄りかかった。
 アスタロトもイールと同じような長居を着ている。
 ただイールよりも上着の裾は短く、肩から流れる金の帯が長く垂れていた。イールはその帯の端を掴み、口づけた。求愛のしるしであるのは、アスタロトも知っている。
 イールとアスタロトはお互いの身体をゆるく抱き、キスを交わした。

「…アーシュの憂鬱は知っているし、考えるなとは言わないけれど、僕達は神としての役目がある。今はそれをやり遂げようよ。ねえ、アーシュ、君はひとりじゃない。僕が居るだろ?君の重荷の半分は僕に背負わせて欲しい」
「イール…僕はまだ未熟なんだよ。自分の責任の重さを知るたびに、それを背負う怖さに怯んでしまうんだ。君や周りと不安にさせる自分が…情けなくて恥ずかしい。君はこんな僕でいいの?」
「僕には君しか居ない。君がいいんだよ、アーシュ。君だけに背負わせないから、自分を責めないでくれ、…僕の為に」
「君の為?」
「君を愛している」
「?…僕もイールを愛しているよ」
「君が、欲しいと言っているんだ」
「…契りを結びたいって事だね。…僕に欲情してる?」
「…うん」
「そう、…抱いていいよ」
「君にその気が無いのに、できないよ」
「イール」
「君を愛しているんだ。だから、僕は待てるよ。君が僕を欲しいと思う時まで」
「…」
「天の皇尊は仰っただろ?時を生きるには順序があるって。僕もそう思うから…焦る必要はないもの。僕達は長い時を生きていかなければならないから必然とそうなると思うけれどね…」
 イールはもういちどキスをした。つま先を立て、今度は アスタロトの額に慈愛のキスを。

「僕は贅沢なんだ。お互いを必要とするのは…天に決められたからじゃ嫌なんだ。君が僕を欲しいと思ってくれないと僕は嫌だから…だから待てるよ、アーシュ」
「イール…」
(待つ必要なんてありはしないのにさ。イールにはそんなに僕が幼く見えるのかな?…まあ、イールの謙虚さは見習うべき良心だと受け取ろう。僕だって早くイールとセックスしたいもの。と、いうか…僕どっちの役をすればいいのだろうか…どっちでもいいって言ったら、イールはきっとどうでもいいんだと解釈しそうだなあ~…僕はイールのしたいようにやって欲しいんだけどさ…)

 考え込むアスタロトの顔にイールはまた憂鬱の虫を起してしまったのかと、少し焦り、機嫌を取ろうと試みた。
「アーシュ、ね。気分転換に明日はセキレイに乗ってどこかに行かないか?ふたりきりの場所を探してみようよ」
「要はそこが快楽を貪る為の秘密の花園ってわけですね。いやらしいなあ~イールは。ああ、セックスだけど、僕は受けでもタチでもどっちでも構わない。イールが好きにしていいからね。遠慮しなくてもいいよ」
 アスタロトの言葉にイールは眩暈がした。
(先程まではあれほど誠実でデリケートに沈んでいたくせに。なんだ、この幼いあからさまな感情は…全くもって…アーシュは子供だ)
「…アーシュ、君が人間をもっと理解したいのなら、デリカシーという言葉を覚えたほうがいいね」
 イールはアーシュの手を払い、くるりと背を向け、部屋から出て行ってしまった。
 何がイールの気分を損ねてしまったか、アスタロトにはさっぱりわからかった。
 


イール・クナーアン33

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● COMMENT ●

好奇心旺盛で 万事に探究心を暴走しがちな神子アスタロト
自分の役割を 全うしようとすればする程 悩む事になってしまうのでしょう。

アーシュといい アスタロトも いつも一歩先を見詰めている気がします。
それに 周りの者が付いて行けない 一抹の淋しさを感じてるのも知らずに・・・

「おあずけ」って!(笑)
はっきり言って 私は それを期待して読んでないので 怒りも罵倒もしないよ~♪
│,,`・Å・)ノ))))))))+。'*.゚:。 ブンブン...byebye☆ 

初Hを書く楽しみってあるんですよね~(*´∇`*)

どんな風にしようかな~、一回は失敗させようかな~、すげー嫌がったら面白いかな~、オロオロしたらかわいいかな~とか…
ラブラブも大好き。
惑星の神様じゃなかったら、自分達の事だけ考えていたらどんなに楽なのだろう…と、思ったり。
今しばらくはラブラブ状態なので私も春爛漫な気持ちで頑張ります。
その後が…いや~な空気が漂っているんですが…

話は変わるけど…昔自転車に鍵をかけてなくて盗まれたことがあって、家族に鍵をかけなかった私が悪いって言われたけど、釈然としない。だって盗った奴が一番悪いんだもん。なんか悔しいというより虚しい気がしたな。どうしたらそんな世の中を変えられるんだろう…って、良く思うよ。
アスタロトもきっとそんな気分になるんだろうなあ~
もっとひどいことも沢山あるしね~
まあ、自転車は奇跡的に戻ってきたんだけどね(息子が偶然道にほったらかしにしてあったうちの自転車を見つけたのですwww)


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