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2019-09

Phantom Pain 5 - 2012.06.19 Tue

5
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


ashp.jpg


 メルを先頭に、アーシュとベルが続き、バクルスを握りしめたまま、三人は次元の空間を歩いていた。
 周りは黄昏時の空の色のような紫炎の薄闇で覆われ、行く先の景色は見えない。が、足元に仄かに淡い光の道が続いている。それより五十センチほど浮いたまま、三人は前方へ動いていた。

「メル、どこに向かっているのかわかるの?」
「いや、わからないけど、君の指輪が指示している方へ向かっている。たぶん次元の上方向に君の求める場所があるはずなんだ。それにゆっくり進んでいるように見えても、ものすごいスピードで移動しているんだよ」
「ふ~ん」
 そうは言われても、風景の変わらぬ霧の中、それも三人の身体に外圧の体感は無いため、スピードを感じることもなく、ただゆっくりと前に進んでいる感じがするだけだ。
「…ね、メル、君、卒業してから何してたの?」
「うん、両親が眠る土地へ行ったよ。それから…放浪の民と旅をして色んな星を回ったんだ。それぞれの土地の遺跡なんかに興味があってね。それらをもっと詳しく研究したいと思っている」
「そうか…なんだか少し安心した」
「なにが?」
「メルが思ったよりもとてもマトモになってるから」
「…君に心配されるのは何よりも嬉しいよ、アーシュ」
「それよりさ、メルは俺がアスタロトの生まれ変わりって前から知ってたの?」
「…うん、昔、キリハラに聞かされた。君と付き合う前だったから、僕も少し怖かったけれど、君の美貌と扇情的魅惑ととことん変わった性格には到底抗えようもなく、犯したくてたまらなくて、君を抱いたんだ」
「はは…メルの変態」
「それに、君が魔王アスタロトであってもそうでなくても、僕は昔から…後ろの人よりずっと前からアーシュに惹かれていたからね。要はアスタロトである君は後づけであって、君とこうやって一緒に旅ができる今がとても幸せってことだよ。…お荷物が居ようとも」
「荷物で悪かったな」
 後ろから威圧的な声でベルが答えた。
「まあまあ、ベルは俺のお守り役だから、必要なんだよ」
「この先どっちがお守り役になるかは、知らないけどね」
「おまえこそ、アーシュに呆けて足を引っ張るなよ、メル」
「君に言われなくても、僕はアーシュのサポート役に徹するつもりだよ。どちみちこの先の場所はアスタロトの世界であって、僕たちの住む世界とは全く違うものだろうからね。アーシュはともかく、僕とベルは招かねざる客かもしれないねえ~」
「…」
 ベルはメルの言動には腹が立って仕方なかったが、メルの最後の言葉には同意せざるを得なかった」

「でもアーシュはやはり普通の魔術師とは全く違うね」
「何が?」
「僕は色んな次元を巡っているけど、移動できるのは横の次元だけなんだ。上下を移動するには物凄い魔力がいるから、普通の魔術師では絶対無理なんだ。アーシュの魔力が破格ってことだよ」
「そうなんだ」
「アーシュ…君、身体は大丈夫?」
「え?別に、どこも痛くないけど?」
「君の魔力でもって、僕らは移動している。死ぬことはないと思うけど、体力的にはすべてのダメージが君の身体に掛かるはずなんだが…」
「メル、あんたそれを知ってて、付いてきたのか?」
「案内人だもの。それより問題は君だよ、ベル。大して魔力もないのに、僕への嫉妬心だけでのこのこ付いてくるんだもの。アーシュの迷惑にならなければいいけどね」
「なんだと!」
「二人ともやめろって…つうか…確かになんか、すげえ身体がだるいんだけど…つうか眠い…」
「アーシュ」
 アーシュは後ろのベルにもたれかかり、大あくびをする。
「ほら、アーシュ。光の道が途切れるよ。目的地に到着したんだ」
 バクルスの杖は光の途切れた場所で停止した。

 三人の前には何も見えなかったが、アーシュは指輪を嵌めた右手で空間をなぞった。
 霧が晴れるように目の前に扉が現れ、アーシュはその手で扉を開いた。
 三人の目の前に、白い床が見えた。
「「「うわあ~っ!」」」
 三人は一斉に床に向かって転げ落ちた。

「いた~いっ!」
 大した高さではなかったため、三人に怪我はなかったが、辺りをきょろきょろと見渡しても、ここがどこか見当もつかなかった。天井の高い白い外壁と、まっすぐに立つ円柱。すべて上質の大理石だろう。至る所に細かいレリーフが彫られている。
 とりあえず三人は立ち上がって、目の前の階段を降り始めた。
「誰だっ!」
 大声を張り上げ、フレイルを持った3,4人の男たちが向こうから血相を変えてアーシュたちに向かって駆けてくる。
「神殿に…しかも拝殿に忍び込むとはなんという不埒者共。一体どこから…」
 怒りをあらわにした壮年の赤毛の男がアーシュの顔を見た瞬間、顔色を変えた。
「あ、もしや…アスタロトさま…アスタロトさま…ですね?」
 男の後ろに駆け寄った年老いた男ふたりも、男の言葉にアーシュの顔をじっと見つめた。
「まさか…幻ではないのか?ああ…そのお姿は真にアスタロトさま…」
「ああ、本当に…アスタロトさまだ。アスタロトさまがお帰りになられたのだ!」
 アーシュには見たこともない場所であり、見知らぬ者たちであった。が、顔を見て「アスタロトさま」と、呼ぶ者は自分よりも「アスタロト」を知っているのだろうと理解していたから、彼らの感情に素直に従い、黙って頷いた。
 男は…クナーアンの神官ヨキは、破顔し深く低頭する。
「お帰りなさいませ、アスタロトさま。どれほどご心配いたしておりましたことか…本当に…本当に御無事でなりよりです」
「ごめん、遅くなって…」
 アーシュは三人の神官の心から喜ぶ顔を眺めながら、なぜもっと早くここへ来なかったのかと後悔した。

「さあ、どうぞこちらへ…後ろの方々は…アスタロトさまのお連れの方でしょうか?」
「うん、大事な友達だよ。ベルとメルっていうんだ…あ…」
 階段を下りながら、アーシュは身体を動かせぬほどの倦怠感で足がもつれ、階段を踏み外した。
 とっさにベルとヨキが支えた為に、転げ落ちるのは避けられたが、階段を降りたところで身体を支える力が無くなったアーシュはベルに寄り掛かるように倒れこんだ。
「アーシュ、大丈夫か?」
「次元を超えてきたから、魔力を使い果たしたんだよ。すみませんがアーシュを休ませてください」
「勿論ですよ。あなた方もお疲れでしょう。ゆっくりなさってください」
「ねえ…君…ここはどこ?悪いけど…俺には…アスタロトとして生きた…記憶がないんだ…」
 アーシュは朦朧とする意識をふりしぼって、目の前で跪く男に聞いた。
「承知しております、我が主、アスタロトさま。ここはハーラル系の第三惑星、クナーアンの神殿です。イールさまとアスタロトさまはこのクナーアンの神さまでいらっしゃるのですよ」
「…神?」
「はい。そして、この神殿は不死の命を持つ、この惑星を司るイールさまとアスタロトさまのお住まいであられるのです」
「…俺は神だったのか…」
「私はこの神殿に使えるヨキと申します。アスタロトさまに命を救われた人間です」
「そう…なんだ。ごめ…覚えてないや…」
 アーシュは自分の記憶の中にヨキの姿を探したが、見つからなかった。

「アーシュ…アーシュ、とうとう来てしまったんだね」
 恐ろしいほどの睡魔に襲われ、目を閉じかけたその時、名前を呼ぶ声にアーシュはやっとの思いで再び目を開けた。
 信じられない懐かしい顔が目の前にあった。
「…あ…ああ、セキ…レイ」
 プラチナブロンドの髪、少し成長し男らしくなった容貌、そして、アイスブルーの瞳が涙に濡れている。
「セキレイ…き、み…なんで…」
 手を伸ばそうとしたが、体力の限界点はとうに尽きていた。
 アーシュはそのまま深い眠りについてしまった。

「ルゥ、君…なんでここに?」
 ベルは思いもよらない再会に、しばらく声も出せなかった。
「ああ、ベル、ベル。懐かしいね。君まで来てくれるなんて…思ってもみなかったよ。でもどうしてメルが一緒なんだ?」
「僕は案内人(カノープス)の役目をもらって、アーシュをここへ連れてきたのだよ。元恋人のルゥくん」
「…相変わらずいけ好かない奴だねっ!」
「ルシファー、ここは神殿だよ。口を慎みなさい」
「…はい、申し訳ありません」
「皆さんも、積もる話は別室でいかがですか?ルシファー、アスタロトさまは私がお部屋にお連れするから、お客様を頼みます」
「はい、わかりました。アーシュは…アスタロトさまは大丈夫でしょうか…」
「顔色も悪くないし、呼吸も安定している。ただ眠っていらっしゃるだけだ。安心しなさい。もとより神様たちは不死身だから、私たち人間が心配することもないんだけどね」
 ヨキはベルに寄り掛かるアーシュの身体を軽々と抱え上げ、足早に神殿の奥の廊下へ向かう。
 ベルもついていこうとするが、ルゥはベルの腕を掴み、首を横にふった。
「ルゥ…」
「ベル、ここに来たってことは、アーシュがアスタロトってことは知っているんだね」
「ああ、俺もメルも…アーシュもそれを知ったからこそ、ここへ来たんだ」
「こちらも色々説明しなきゃならないことがあるんだ」
「でもアーシュが…」
 ベルは、誰か知らない奴に抱かれ、連れられるアーシュを追っていきたい気持ちを抑えきれない。
「アーシュならヨキに任せて大丈夫だよ。彼は信頼できる神官だよ」
「…わかったよ。郷に入っては郷に従えという。ここでは俺は異邦人だから仕方ない。だけど、ルゥ、君がどうしてここに居るのか知りたい」
「この惑星クナーアンは、僕の故郷だからだよ、ベル。アーシュはあの日、ちゃんと僕を両親の元へ送り届けてくれたんだよ」

 容姿はあの頃よりも少しだけ大人になったルゥは、ベルにあの頃と変わらない笑顔を見せてくれた。
 見知らぬ世界で不安が募るベルだったが、ルゥの存在がベルには救いの天使のように思えた。
 

ルシファー


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● COMMENT ●

何事もなく 3人一緒に 無事に辿り着けて良かったです。

あのヨキが 壮年の神官になっていたとは、月日を感じますね。

そして ここで ルゥが登場するなんて 吃驚~!Σ(゚ω゚)b
そうか ルゥは クナーアンの出身だったんだ。
これも 何かの運命を感じます

見知らぬ惑星で 頼りになる存在のルゥが居て アーシュは勿論 ベルもメルも 少し安心できますね♪

サイアート様、台風は もう通り過ぎたでしょうけど、大丈夫でしたか?
私の方は、やっと先ほどから 昼から ビュービュー吹いてた風が 治まったところです。
@台風@ ヽ`、ヽ(つ∀゚;)っ─<ヽ`、ヽ 傘が…byebye☆

台風の風は全く影響がなく、雨だけが一日中降っておりました。
いつもこの時期は、水不足の心配のニュースが続くのですが、今年は全然心配ないみたいですね~何も言わないから。

ルゥはなかなか複雑な心境なんですよ。
イールさまの愛する者が自分の恋人だった奴ですからねえ~
クナーアンに住む者としては、イールとアスタロトが仲良きことを祈らなきゃならないしねえ~
でもあのアーシュだから、そんなの関係ねえ~とか言い出しそうだし…
頭の痛いところなんですよ~

ヨキは…けっこう美味しいキャラなんですよ。最後まで出る予定です。


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