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2019-09

僕の見る夢 13 - 2008.12.04 Thu

7.

それから暫く麗乃は俺の傍から離れようとしなかった。俺の不安定な状態が心配で仕方ないらしい。向こうとは立場が逆になったって訳だ。
俺は俺で、どうしようもなくネガティブに墜ちていて、それでいてひとりでいるのが嫌で、子供みたいに麗乃を求めていた。

「痛っ!」岬の声が聞こえた。
「どした?」
「いや、ちょっと紙で指切った」
スタジオでの休憩中、岬が右手の人差し指を舐めながら俺の隣に座った。
「気をつけろよ」机の向かい側でスコアを見ている眞人が顔を上げた。
「大した事ねえよ」
「いいから消毒しとけって」眞人が立ち上がって、スタジオの隅から救急箱を持ってくる。

「…岬」
「なに?ユキ」
「痛い?」
「少しね。見るか?…うすっぺらの紙でこんなに切れるんだぜ」と、指を見せてくる。
じっと見てると、一旦止まった血はじわりと切れた傷口から溢れてくる。
「結構血ぃ出るね」
「な、紙もあなどれねぇぜ」
「馬鹿言ってないで、ほら、岬、手ぇ出せ」眞人が消毒液を手に岬の手首を掴んだ。

…紙で切ったくらいでも、あんな血が出るんだ…
じゃあ…麗乃はどんなに…
一杯血を流して…
どんなに…
痛かったんだろう…
どんな想いで手首にナイフを当てたんだろう…

岬から目を離して何気なく机を見ると、散らかった机の上にカッターナイフが見えた。
俺はそれを取って、刃を出してみる。
…そっと手首に当ててみた。
刃先の冷たさを感じた。
そのままカッターを持つ手に力を込めてみた。
…っ、ジリと、全身に電流が走るみたいに総毛立って、…いったっ…
次に来たのは強烈な痛みだった。
「…って…」
「ユキっ…、馬鹿、おまえ何やってんだよ!」岬の驚いた声ではっとなった。
「…血ぃ出てんじゃねえかよ」
「あ…」
「いくらおまえが実験好きでも、そんな事は試さんでもいい…ほら、カッターよこせ」
「…うん」
カッターを握り締めてる手を掴まれて、眞人がカッターを取り上げた。
「バカバカバカ、ユキ…一杯血ぃ出てるし。おまえ何なんだよ、何やらかすんだよお…」岬が俺の手を取って、懸命にティシュで押さえては新しいのと代えてくれる。
血の付いたティシュが目の前に重なった。
「痛くねえか?ユキ、痛くねえか?」って、岬が何度も訊くから可笑しくなった。
「おい、由貴人…何があったが知らねえけど…香月の前でやんなよ」眞人が消毒液を岬に渡しながら、俺を見た。
「えっ…やんないよ。ちが…れ、麗乃には言わないでよっ!」
「ユキ、おまえ、どうしたの…」
「絶対、絶対言わないで、頼むから…」
「判った。言わないから…そんな泣きそうな顔するな」
「ユキ、じっとしてろ!…大丈夫だから。大した傷じゃないから…」
岬がいつの間にか俺の右手首にきつく包帯を巻いていた。
…大げさだろ。これじゃ、麗乃に隠す意味がねえ。
「おまえねえ、どうかしちゃたの?」
岬が呆れるのもわかる。俺だって当の昔に呆れ果ててるよ、自分自身にはね。

応えようとしない俺に二人は沈黙を続けた。
静まり返った部屋にガチャリとドアが開く音が響いた。
三人が一斉にそっちを向く。
今、一番見たくない姿がそこにあった。







ちょい暗めだけど…こういうユキが嫌われるんだよね~ww
あ、ちなみにユキは基本左利きです。

● COMMENT ●

なんかね

ユキの言動とかわかるんですよね。
でも、わかっちゃう自分がイヤというか…。
ユキは正直すぎるから。
それってまわりの人間にしてみたら厄介な存在でしょ。

ユキは

自分には全くないと思ったけど、この子を自分の中に取り入れてから、回りの見方が変わりましたよ。
とにかくなんにでも優しくなれるんですよ。素直な心になれる。
自分でも驚くくらいこの子に癒されました。
そういう意味で、麗乃には絶対必要なんでしょうなあ~


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