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2019-09

 - 2012.12.11 Tue

クリスマス聖母39



「慧、抱っこして!」と、弟が言う。

 クリスマスシーズンたけなわの混雑したデパート。
 両手に持った紙袋はさして重くもないけれど、思いの外かさばっていて、持ったままでは弟の望みを叶えられそうにない。
「ゴメン、凛。荷物が多くて、抱っこできないよ。帰ったらしてあげるから、我慢しなさい」
「嫌々、今がいいの。抱っこするの」
「…」
 俺を振り返って、見上げる弟のまっすぐな目力には、いつも敵わないとわかっているけれど、この状況ではとても無理だ。
「凛、慧は沢山のお荷物で凛を抱っこできないでしょ?我儘言わないの」
 弟の手を握りしめ、前を歩いていたひとつ下の妹、梓が少し強い口調でいましめる。
「じゃあ、僕がお荷物持つから、慧の両手空くでしょ?そしたら抱っこできるよね」
「…凛、それじゃあ、慧は凛と荷物の両方を持つことになるじゃない」
「ならないよ。僕がお荷物持つんだもん」
「…」
「…」
 俺と妹は顔を見合わせる。

 困った弟の我儘だが、なんとも言えない愛らしさについ口元が緩む。
 それを見た妹はダメダメと首を横に振り、また小さい弟を説得する。
「凛は今度の春になったら、五歳になるのよ。五歳と言ったら子供の大人よ。抱っこなんておかしいわ」
「子供の大人は子供だもん。梓は僕が子供だと思ってごまかしてるう~。それに僕は慧に頼んでいるの。ね、慧、お荷物持つから抱っこして」
 仕方がないなあ~と、腰をかがめ、弟に手を伸ばす俺の前に、妹が立ちはだかる。
「駄目よ、凛。凛はもう大きくなったから、抱っこするには重いのよ。このお荷物よりずっと重いの。慧だって凛を抱っこするのは大変なのよ」
「え~…僕、そんなに重いの?」
「そうよ。どんどん大きくなって私よりもずっと大きくなるから、そろそろ抱っこは卒業しなきゃね」
「じゃあ、僕、大きくならない」
「え?」
「え?」
「ご飯もお菓子も食べない。そしたら大きくならないから重くならないよ。そしたら抱っこできるでしょ?慧」
「…」
 さすがの妹もお手上げらしい。大きなため息を吐いて、弟の手を離した。
「…わかりました。凛を抱っこさせていただきます」
「わーいっ!」
「梓、荷物頼むよ」
「…ったく、凛には勝てないわ」
「ほら、おいで、凛」
「わーい!抱っこだあ~」
 無邪気な声を上げ、抱き上げられた喜びにはしゃぐ弟は、なによりも愛くるしく、愛おしさが募る。

「梓、僕、お荷物持つよ」
 弟が伸ばす小さな手に、梓は一番小さな紙袋を手渡した。
「お願いしますわ、我が家の天使さま」
「僕は天使じゃないよ。僕はすくねりんいちだよ」
 そうやって笑う弟が、本当の天使のように思えてしまって、ふと不安になった。

「そうだね、凛はずっと俺の弟だね」
 そういうと、俺はどこにも飛んで行かぬようにと、凛をしっかりと抱きしめるのだった。




頭に浮かんだ物語を掌編にしてみようと思いました。
これは今日、思いついたものです。
小さい頃の宿祢兄妹弟が大好きなので。

宿禰兄弟の物語は、カテゴリ「green house」からどうぞ~( ´ ▽ ` )ノ



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● COMMENT ●

幼い頃の凛、可愛い~☆(・ω・*人)
こんな事を言われたら いっぱいいっぱい抱っこしてまうな、私も♪

我が家の息子が小さい時 自分の我を通す為 お店の床を転がって グズったのとは大違い(笑)
それも決まって 甘々な祖父母が一緒の時!
幼いなりに 色々と考えてるのでしょうね。侮ってはいけません!
ダダッコォ (ノ><。)ノ))...byebye☆

ホントに短いお話だけど、こんな風に書けるって幸せですね。
何も説明しなくても、もうちゃんと風景が見えるものねえ~

うふふ、それは大変でしたね。
うちは全くぐずらなかったです。あまり欲しがったりしなかったなあ~。まあ、なんでも買ってやってたんですけどwww
じじばばはすぐお金をくれるので、結局「おかあさん、はい」って私に渡すので、私はすぐにそれを貯金に…
大人になったとき、それぞれにその通帳を渡しました。
それぞれ50万は貯まっていたかな~
ほとんど使わなかったから。
それでも息子の友達はもっとたくさん貰っていたと言ってましたね、お年玉。

こんにちは。ものすごくお久しぶりです。(もう忘れてるかも?)

green houseが大好きです。

凛かわいい。幼い頃から天使で、周囲を魅了するのは、成長しても変わってないですね。

兄弟3人が揃っているのは嬉しいです。

私は慧が好きなので、慧と凛が仲良しってだけで萌えです~

まだ、幼いのに~

こんにちは、蝶丸さん。
いえいえ、覚えております。本も買って頂いたし…(*・ω・*∩

凛、かわいいですか?なんかただの我儘、ああいえばこういう口数の多いガキって感じですけどね( `^ω^)=3
慧一視線なので、なにがあってもメロメロなんですけど、梓はがんばってしつけようとしている。けど、凛の可愛さに負けてしまう。
そういうふたりを比べてもらうと、楽しいかも。

こういうエピソードは私の頭にいくつもあるので、そのうちに披露できたらいいな~と、思います。
BLとは少し違ってしまうけどねえ~(*'ω`*)ゞ

凛が「抱っこ~」って、慧に強請るシーンが、いつも私の頭の中に浮かんでくるのです。

コメントありがとうございました。


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