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2019-09

バレンタインデー 1 - 2013.02.06 Wed

バレンタインデー 1

イラストはサムネイルでアップしております。
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漣と

出会ったのは中学の入学式。
真新しい詰襟の学生服の君は、新入生代表の挨拶を緊張する風もなく、淡々とやってのけたね。
僕はその姿に憧れ、そして…恋をしたんだ。


バレンタインデー 1


なんとか中学の入学までに間に合うようにと新築の住宅へ越してきた僕達、仁井部一家の生活は、それまでの暢気な社宅暮らしとは一変した。
毎日二時間を通勤する父親とはほとんど顔を合わせる暇もなく、母親は新築したばかりのインテリアコーディネートを毎日楽しんでいた。
六歳上の姉は、大学進学で待望の独り暮らしを始め、新築の家には寄り付かない。
僕はと言えば…
友人も知り合いもいない新しい中学生活が不安でたまらなかった。
「大丈夫よ~。周りのみんなだって新入生じゃない」と、能天気な母には僕の心細さはわからない。
だがラッキーなことに、彼が…憧れの君、あの柊木栄嗣(ひいらぎえいじ)が僕のクラスメイトになったのだ。
話しかける勇気は出なかったが、彼の姿を眺めるだけで、登校拒否にはならずに済みそうな気がした。
そして、幸運は続いた。
部活は同じバスケ部。しかも…僕の家と柊木栄嗣の自宅は近所だったのだ。

「あれ?君…確か同じクラスの仁井部くん…だったよね」
彼が僕を認識したのは、新学期が始まって一週間目の朝だった。
その時はまだ新入生の部活動は始まっていなかったから、同じ部活になるとはお互い知らなかった。
僕はいち早く、朝、彼が登校する時間を見計らい、その時間に合わせて家を出ていた。そのうちに彼が気づいてくれるのを期待していたんだ。
だから色々なシチュエーションは頭の中で想像してはいたんだけど、実際彼が振り返って僕に声を掛けてくれた時は、マジで心臓が飛び出すかと思った。
「う、うん」
「君、新しく越してきたんだよね」
「そうなんだ。だから友人というか…知ってる子もいなくて…」
「そう、じゃあ、俺が君の友人一号ってことで…俺、柊木栄嗣。よろしくな」
そう言って爽やかに笑いかけてくれたことが嬉しくて…友達になれたことが幸せで…病気になってもぜったい学校休むもんかって、真剣に思った

そして、僕と柊木栄嗣は親友になった。僕ではなく、彼が「親友だからな」と言ってくれたのだ。
当然部活動の帰りも一緒、朝の通学も時間を合わせて通うようになった。
最初の不安なんてどこかへ吹き飛び、僕は毎日夢心地の気分でいた。

柊木栄嗣はどこから見ても非の打ちどころのない中学生だった。誰が見ても好感のもてる整った顔つきと、十分な体格を持った姿形は言うに及ばず、品行方正で頭脳明晰、スポーツも難なくこなし、分け隔てなく誰にでも親しげで、弱い者には優しい言葉を掛けた。
目上の者に対しては、大人びた言葉を使い、納得いかなければ、先生からすれば青臭いヒューマニズムではあろうが、真向から反論した。
誰もが…成績しか興味のないインテリも悪ぶった悪たれ達も、柊木栄嗣に楯突くことはなかった。むしろ悪ぶった生徒たちは、彼の真っ当な正義感に憧れさえ抱いていただろう。

そんな柊木栄嗣と親友であることが、僕には神様がくれた奇跡の恩寵のように思え、彼と一緒に居る時は、喜びと共に少しだけ緊張もしていた。

「俺の事は栄嗣でいいって言ってんだろ?漣(れん)」
「う…うん。でも呼び捨てってなんか柊木くんっぽくないかな~って思ってさ」
「なんだよ柊木くんっぽいって。ふふ…漣は変な奴だなあ~」
「そうかな」
「でもおまえの名前ってかっこいいよな」
「え?」
「クラスの名簿見た時さ、仁井部(にいべ)漣ってなんて呼ぶんだろって思ってね。『さざなみ』って書いて『れん』ってさ」
「父さんが学生時代にボートをやってて、そのボートの名前が『漣号』だったんだって。酷いよね。息子にボートの名前を付けるなんてさ」
「いいじゃん。『漣(さざなみ)』ってかっこいいじゃん。俺、好きだな」
「…」

栄嗣の「好きだな」と言う言葉に僕の鼓動が高鳴った。
生まれて初めて性的な興奮を覚えたと言っていい。何の事は無い。
彼は僕の名前が好きだと言っただけというのに、僕の恋心は確実に芽生え、そして一気に上昇してしまったのだ。

そんな彼がモテないわけもなく、栄嗣は何度も女子から告白をされていたが、何故か特定の女の子と付き合っているという噂も聞かなかった。

一年の秋、僕は偶然にも栄嗣が告白されている現場に居合わせた。と、言うより、体育館の裏の柱の陰で、こっそりふたりの会話を聞いてしまったという方が正しい。
相手の女子は隣のクラスのマドンナ的存在の子で、バスケ部の中でも人気があった。と、言うのも、体育館の窓から見えるテニス場が、彼女の部活の練習場で、そのスコート姿が可憐でその頃の男子にはたまらない、と、言う極めて俗っぽい趣向で人気があったのだ。
栄嗣も周りの部員と一緒になって、「あの子かわいいよな~」と、はしゃいでいたから、この現場を見た時、栄嗣はその女子の告白を受け入れるものとばかりに思っていた。
女の子の告白は真剣で、精一杯の想いを栄嗣に伝えようとする気持ちがこちらにも伝わってくるほどだった。
だが、栄嗣は頭を掻きながら、その女子に言った。
「悪いんだけどさ…俺、好きな子がいるんだ。ごめんね」
しばらくして、女子の涙ぐむ横顔が、見えた。

その日の帰り、栄嗣と並んで歩きながら、僕は栄嗣に聞いた。
「あのさ…さっき、偶然に見たんだけどさ…栄嗣が女子に告白されるところ…」
「え?」
「盗み見じゃないよ。ホント偶然だったの。ゴメン。黙っていようと思ったけど、なんか隠し事をするのが嫌だから…」
「…そっか~見られてたのか~」
「ゴメン。でも…なんで断ったの?あの子のこと、君もかわいいって言ってたじゃないか」
「う~ん…なんつうかなあ~。客観的に観てかわいいと思う事と、付き合いたいって思う事は違うんじゃないかな。俺、結構女の子に付き合ってくれって言われるけどさ、あんまり付き合いたいなあ~とは思わないんだよね」
「…他に好きな子がいるから?…その子って僕の知ってる女子?」
「いや、あれは嘘だよ」
「嘘…なの?」
「昔…って言っても小学六年の時さ…好きだった子に告白されて喜んで承諾してさ…まあ、小学生だから付き合うって言っても、一緒に下校するくらいじゃん。それでもあっという間に付き合ってるってクラスで噂されて…それはいいんだけど、今度はその子が怒るわけ」
「何を?」
「『どうして他の女子と楽しそうに話すの?』『どうして昼休みに男の子たちとばっかり遊んで、私と一緒にいてくれないの?』最後には『栄嗣君には私がいるのに、どうして他の女子を見るの?』…だって。ぞっとするだろ?」
「それは…まあ…そうだね」
「もう面倒臭くて付き合うのを止めた。それからも色々揉めたりしてさ。もうしばらく好きになったり、付き合ったりするのは止めようって決めているんだ。まだ中学生だし、恋とかより、みんなと遊んだり、バスケやったりする方が楽しいじゃん」
「…そうだね。なんとなくわかるよ」
「女子と喋るより、漣と居る方がずっと楽しいじゃん。なあ、そう思わねえ?」
「…うん。僕も…栄嗣と居る時が、一番楽しいよ」


…好きな相手がいないのは嬉しいけれど…
親友って存在が、どれだけ尊いものかもわかっているけれど…
僕は君の恋の相手にはなれないんだね…
ねえ、栄嗣。
僕の恋心は君にとって、罪になるのだろうか…。



 2へ

バレンタインまでには間に合わせるように…します~
セレナーデはもちょっと待ってね。



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● COMMENT ●

漣が、英嗣に対して 憧れから 恋へと変わって行く気持ち 分かる!

私の場合も すっごく人気のある一歳上の先輩で バレーする姿が カッコ良くて 憧れから 好きになったから♪
私はテニス部で 体育館の近くにコートがあったので 見てるだけで ボーっとなって 満足してましたね。
中一から その人が卒業するまで片思いしていた ウブだった頃の私です(*⌒∇⌒*)テヘ♪

周りには 結構付き合ってるオマセな子も たくさん居たけど、
何故だか 告白したいとか 付き合いたいとかは 思わなかったなー

バレンタインに 漣は英嗣に 告っちゃうのかな?
後編、楽しみしてま~す★。o@(^ゝω・)@o。ニコッ♪...byebye☆




 

私も中学時代はテニス部でした~。その頃はテニスが人気だったんだよねえ~エースをねらえ!とかで~
で、コートの横には体育館が…剣道部の袴姿にぽわ~んってなってたwww
なんつ~か完全に片思いですね。
私も栄嗣と同じで恋愛なんて面倒くさい派なので、片思いで観てるだけでいいんですよ。クラスメイトで楽しく話しているだけで楽しいんですよ。それ以上は全く求めないなあ~

バレンタインに告白して成就するめでたしめでたし…そんな素直な私ではないので~

大体こういうBL恋愛にハッピーエンドなんて5本に一本ぐらいでいいんですよ。
ずべて幸せに…なんて、つまらねえ~し。


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