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2019-09

バレンタインデー 3 - 2013.02.14 Thu

バレンタインデー 3

イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方はイラストをクリックしてください。


漣と栄嗣11



バレンタインデー 3

その春、柊木栄嗣も僕も第一志望の高校へ進学した。
別れは辛かったけれど、おそろいの携帯電話を買って、頻繁に連絡をし合うように約束した。
別々の高校へ行き、離れ離れになっても、僕と栄嗣の仲は揺るがなかった。
携帯電話、メールのやり取り。栄嗣が帰省する時は、必ず僕に会いに来てくれた。
夏休みには海水浴、隣県のキャンプ場まで自転車で飛ばしたり、映画を観たり…ふたりだけで楽しんでは笑いあい、至福の時を過ごした。
僕は相変わらず栄嗣が好きで仕方なく、恋愛感情も消えてはいなかったけれど、それを栄嗣に告白しようとは、思わなくなっていた。
こうしてふたりきりで栄嗣と一緒に楽しめるのなら、普通の恋人たちがやっていることとなんら変わりがないではないか。
ただ、僕達の間では、性的なものが発生しないだけだ。

キャンプ場の夜、降るような星空を寝転んで見上げながら、話したことがある。
「ねえ、栄嗣は恋人はいないの?」
「ん?ああ、うちは女子が少ないからな。それに毎日課題をこなすのが大変で、色恋沙汰に時間を掛けている暇がないんだ」
「そう…」
「漣はどうなんだ?好きな子とか付き合いたい子とか、いないのか?」
「別に…いないね」
「おまえ、女子にはそっけなかったからなあ~。見かけは悪くねえのにさ」
「栄嗣がモテて困っているのを見慣れてるから、僕もあんまり女子に関心はなくなったんだ」
「なんだよ。漣に彼女ができないのは俺の所為か?」
「そんなんじゃないよ」
「…実は俺さ。半年ぐらい前かな。うちのクラスのすげえ美人の女子に告白されて付き合ってみたんだ。一緒に食事したり映画観たり…キスもした」
「…」
「でもなんかな…別にその子に不満があるわけじゃないけど、ワクワクしない。そんなに楽しくねえし、この子とセックスしたいとも思わない。それなりに気を使って、共通の話題を探して、無理やり笑いを誘って…なんか恋愛ってこんなつまんねえものなのかな…ってさ。これなら漣と一緒に居た方が、ずっと楽だし、楽しいし…こんな風に正直に話せるし…。やっぱ俺には恋愛って向いてないのかもしれないなあ~って思えてさ」
「…」
「まあ、それならそれでいいし。恋愛しなくても楽しく生きていく道はあるし、今の俺は機械やプログラムの勉強してる方が楽しいからな」

それだけ打ち込めるものを持っている栄嗣が、僕は羨ましい。
僕だって本も読むし、音楽も聴くし、スポーツだって観るのもするのも嫌いじゃない。だけど結局本気で夢中になるものって…僕には栄嗣しかいない。

「…僕は…恋愛したいって思うよ。好きな人がいて、その人も僕を好きでいてくれて…そんで恋人同士になって…その人の為に精一杯尽くして、幸せを沢山与えて、ずっと一緒に…死ぬまで一緒に暮らすんだ。…それが僕の夢だよ」
「なんだよ、漣…まるで好きな人がいるみたいな言い方だな」
「たとえばの話だよ。今は…栄嗣と同じで好きな女子はいないし、欲しいとも思わない。僕も栄嗣と一緒に遊んでいる時が一番楽しいし…」
「…」
何も言わず、僕の顔をじっと見つめる栄嗣の視線を逸らすように、僕はただ星空を見つめ続けた。


高校三年の夏、栄嗣は帰省しなかった。
高専ロボットコンテストにエントリーするロボットの製作に取り組んでいるらしい。
栄嗣からの電話は多くなり、疲れた声を出し愚痴を吐いたり、声を荒げて怒ってみたり、思い通りにならないことの苦労話を聞かされた。その度に僕は栄嗣を宥め、励まし、大丈夫だと何度も繰り返した。

秋になった。
羊雲が空を覆い尽くす様を、部屋のベッドに寝転んで見上げていると、栄嗣からの携帯が鳴った。
「はい」
『漣!俺、地区予選突破した!』
「え?、ロボコンのこと?」
『そうなんだ!優勝は逃したけれどアイデア賞で全国大会に出場が決まったんだ!』
「良かったじゃん!おめでとう、栄嗣。あんなに頑張ってたもんな」
『あのな、驚くなよ。ロボットの名前、「漣(さざなみ)号」って付けたんだ』
「え?…どうして?」
『漣の…応援があったからここまでやってこれたんだ。漣が俺に作り続ける力を与えてくれたから…漣がいたからできたんだ。だから漣の名前を使わせてもらったんだ。ほら、漣の名前の付いたロボットなら、すげえ頑張って最後まで動きそうな気がしないか?…ねえ、漣…漣?』
「…」
僕は息をのんだ。鼓動の音が耳鳴りのように響いて、次第に強まってくる。
息ができない…
驚きと嬉しさで、涙が出そうだ。
栄嗣、栄嗣、それは…僕への告白なのか?
それとも…相変わらずの能天気な君の友情の証なのかい?

『漣?どうかした?』
「…いいや、あんまり嬉しかったから…言葉が出なくなった」
『馬鹿だなあ~。まだ予選突破だよ。これから優勝目指してもっと精度を高めていかなくっちゃな』
「うん、そうだね…ねえ、栄嗣。これからも僕は君の…傍で応援し続けてもいいかい?」
僕の問いに栄嗣はしばらく黙った。
そして応える。
『漣の存在が、俺を勇気づけてくれる。だから…傍に居て欲しいよ』
「…うん、わかった。じゃあ、全国大会頑張ってね。必ず会場に観に行くよ」
『うん、待ってる、じゃあ』

栄嗣からの電話の後、僕は机の引き出しを開けた。
あの時、渡せなかったバレンタインのチョコレートの箱を取り出した。
中身のチョコは腐ってしまう前に食べちゃったけれど、箱も、リボンも、チョコを包んでいたパラフィン紙もそのままに残しておいた。
箱の蓋を開けるとまだ甘いチョコの香りが漂った。
三年前のあの時の気持ちが、蘇ってくる。
今も変わらない栄嗣への想いは、ちゃんと育っているかい?
僕は自分に問いただす。
「大丈夫だ」と、答えた。
そして、今ここで誓おう。
これからもずっと栄嗣の傍で、栄嗣との絆を育てていこう。
栄嗣が求めるものと、僕が求める愛が異なるものであっても、僕は決してこの恋を諦めたりしない。

渡し損ねたこの空のチョコを、今度こそ栄嗣に渡そう。
三年前の想いと、三年分の想いを込めたこの箱を。

「栄嗣、好きだよ。ずっと好きだった。栄嗣に触れていたい。キスしたい。抱きしめあって離れずにいたい。でもね、何よりも、栄嗣に幸せになって欲しい。だから、僕は…そのためにならなんでもするよ。これからもずっと…愛してる、栄嗣」

空の箱にありったけの想いを告白し、僕は蓋を閉め、リボンを掛けた。


そう、今日が僕のバレンタインデー。




 2へ 



さてさてこの恋が本当に成就するかどうかは…また別のお話で、お目にかかりましょう…


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● COMMENT ●

どんなに好きでも この関係を壊したくないと
頑なに 自分の想いを閉じ込める漣は、強い人なのか 弱い人なのか…

これだけの 長く想いを寄せられてる英嗣も 何かしら 感じているのではないの?

私には 何年もの片思いをする忍耐?根性?、無いけどね(笑)

それはそうと サイアート様、
『また いつか お目にかかりましょう』だなんて これは 世間で よく言う「焦らしプレイ」って事でしょうか(笑)
また書いて下さる気持ちが お有りだと解釈して ♪感謝☆(人゚∀゚*)☆感謝♪
気は長いので ゆっくり待ってますが、私のポンコツ脳が忘れない内に お願いしたいです
((*'∇'*)ヨロ((*・v・)シク( _ _)デス♪...byebye☆


そうなんです。
栄嗣が曲者なんですよ。だから今度は栄嗣視点で描いてみたいんです。
本当に漣の気持ちに気づいていなかったのか…
それを計算する男ではないんですが…
栄嗣君のこれからの選択が見ものなんですよ…きっと、たぶん…いやなんも考えていませんけどwww

大丈夫、けいったんさんより私の方が早く忘れていますから~

V.D企画

学生の時って特別な空間を生きていますよね。
これから2人がどうなっていくのか、どちらかが、勇気を出して新たな関係を築いて行こうと歩み出さないと、進展しませんよね。
親友でいるのもいいけど、それじゃあエチはできないしね~

サイアート様の現代、日本人ものが好きです。
カタカナ弱いので、想像力も貧困だし、海外留学の経験もないし~(T-T)
以前、覚えているって言って貰えて感激しました。

今は関西ですが、遠く昔、曙町に住んでいたことあったので、勝手に親近感抱いています。
あっ、迷惑だったらゴメンナサイ・・・

蝶丸さん、こんにちは~
うちはお客さんが少ないので、コメントされた方は大体覚えております( ,,`・ ω´・)
いつも応援ありがとございますΣd(ゝ∀・)ァリガトォ♪

私が日本現代の子たちを描くとどうしても自分の若い頃の感覚になり、純情的なお話になって、エロがないんですよねえ~
まあ、エロを求める方はうちには来られないと思いますけど(*'ω`*)ゞ
それに今の子たちの考えとか、生活、ファッションに自分がついていけてないので、現代社会を描くのは苦手ですねえ~

すべてを自分で想像して描くのは、非常に気力と胆力がいるんですが、想像力の世界なので、描いていて楽しいんです。
まあ、自己満足の世界ですけど、ブログでは許されるでしょう。
それに、世界観を理解したら、ファンタジーも面白いですよ。海外留学…一度はしてみたいです~

曙町…今もあんまり変わんないみたいですよ。道、狭いしwww
暮らすには便利ですよね、ここらへんは。


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Author:サイアート
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